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誰もが立ち上がった部長を見上げる中、一番最初にリアクションを取ったのは、英輔くんだった。
細い腕を組んで、ちょっとの間、可愛らしい顔で考えて。
「……それって、図工室の絵の話ですよね?」
と、たずねた。
部長からの返事は返ない。
部長は予言中は予言以上のことは言わないし、巣に戻ったら予言のことはすっかり忘れてしまうからだ。
英輔くんは自分の中で答えにたどり着いたようで、わたしとみももちゃん、史子さんの顔を見る。
「……ギリシャ人も言ってたんですよ。あいつ危ないって。あと、通りすがりの霊とかも、今日誤記があるんじゃないかって……」
ギリシャ人とは、おそらく図工室にある石膏の胸像。
不思議研究同好会、四年四組・稲川英輔。
普段は可愛い弟系男子。
その実、物や霊の声を下すことができる『口寄せ師』。
「口寄せ師の英輔くんも認識しているとなると、すぐ行ったほうがいいわね」
史子さんはそう言うと、手首に通していたヘアゴムで少しふわっとした長い髪を結び始める。
「それに、生贄がいるってことは、襲われる子がいるってことよね。ここはわたしの出番かしら?」
そう言って微笑んだ史子さんは、胸まであげた手のひらを開いたり握ったり。
不思議研究同好会、六年二組・十文字史子。
普段は学校一のマドンナ。
その実、言葉で相手を催眠状態にしてしまう『催眠術師』。
「っていうか、またみももが一人で戦わなきゃいけないやつじゃん。ほんと、都市伝説のウワサ流すやつ、タンスの角に足の小指ぶつけろっ」
と、ぶーたれながらも、みももちゃんが気にしているのはネックレスに通した変身アイテム。
なんだかんだ言いながら、やる気になってくれているのですごくありがたい。
不思議研究同好会、四年三組・横山みもも。
普段はゆったり口調のダルだるゆめかわ女子。
その実、都市伝説と戦うことができる『魔法少女』。
「タンスの角に足の小指ぶつけろ……は同意する」
わたしはみももちゃんの言葉に、数時間前の教室での出来事を思い出した。
だからわたしは、クラスメイトたちがしていた都市伝説の話題を止めたかったんだ。
だけど都市伝説が現れてしまったなら、わたしたちが被害を食い止めなきゃ。
「わたしもサポートするから、いこう? 都市伝説が出たら、私たちが何とかしなきゃいけないんだし……!」
わたしはそう言ってみんなを励ますと、カバンの中から愛用のタロットカードを取り出した。
これはおばあちゃんから譲り受けたちょっと不思議なタロットカード。
不思議研究同好会、五年二組・加賀愛美。
普段はちょっと気味悪がられているわたし。
その実、占いが得意でカードを使ってちょっとした魔法を出せる『ただの人間』。
不思議研究同好会は、表向きはただのオカルト同好会。
だけど実は、学校に現れる『都市伝説』を唯一倒すことができる超能力集団の集まりなのだ。
そう。
……わたしを除いて。
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