初恋。

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初恋。

「始めまして、こんにちは。教育実習生としてこの学校に来ております、|御崎美英(おざきみえ)|です。短い期間ですが、宜しくおねがいします」 寒い日と暑い日との寒暖差の激しい五月中旬、教育実習生の登場に、ここ、音楽室に移動教室で来ていた一年二組の面々はざわめきだった。 たかだか教育実習生が挨拶をしただけじゃないか_と、クラスメイト達を心の中でコッソリ見下しつつ、私は御崎美英を見るために目線を上げた。 彼女は綺麗だった。 綺麗としか言いようが無いほどに、綺麗だった。 肩につく程度の長さの、黒い部分の一切ない茶色い綺麗な癖一つなき、よく手入れされていることの分かる髪。整った眉。切れ長の二重の目。紅い口紅の塗られた唇。余分な脂肪が一切ない華奢な体を包む、シワひとつとてない黒のスーツ。 「…、…ちゃん、コノエちゃん」 名前を呼ばれてハッとした。そうだ。今は授業中だった。 「んー?どーしたぁ?」 「いや、何か超ぼへぇっとしてたから。どうしたんかなって思うて」 「え、ウチぼへーっとしてた⁉マジで‼」 「うん」 「そっか…。自覚無かったわ」 「おい、ちょっとそこ‼忍野(おしの)さんと雲母(きらら)さん‼なぁに授業中に喋ってるんですか‼折角、美英先生が授業をしてくれているというのに」 江道先生の怒声が飛んできた。 「ごめんなさい、以後気をつけまっす」 娃璃(あいり)がそう江道先生に謝ると、更に江道先生はブチギレた。 「何ですかその誤り方は‼反省しておられるのですかっ?」 「まぁまぁ、娃璃さんと忍野さんは反省していますから…。それより江道先生、授業の続きをさせて下さい。単位が取れなくなってしまうので。お願いします」 「ハァ。…続けて」 そう言って、江道先生は怒りを引っ込め、授業が再開された。 私は、美英先生に救われた気分だった。 胸がキュンと、した。
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