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「亜依さんは脩二が好きみたいだけど」
脩二は首を横に振り、ため息をつく。
「亜依は隼人さんに甘えてるだけだよ」
ナイフで刺そうとした相手に刺されるなんて皮肉なものだ。
「でもびっくりしたよ。あとをつけてくるなんて」
脩二は自分の癖に全く気づいていないらしい。
「タバコが大嫌いなの」
「知ってる」
「脩二の浮気の相手が、タバコを許す女性だと思ったの」
「えっ」
「脩二はそういう女性と一緒にいる方が幸せなんだろうね」
「……やめろよ。そんな事ないから」
その言葉には嘘がないと信じたい。
「うん」
「でも本当に良かった。少し傷は残るけど、内臓は傷ついてないって」
脩二は少し震えていた。
こんな脩二が見られるなら、刺された甲斐があったと不謹慎にも思ってしまった。
「ステーキ美味しそうだったなあ」
「え?」
亜依と隼人はこれからどうなっていくのだろう。いつまでも隼人は亜依の帰りを待っているのだろうか。
「退院したら映画を観に行こう。夜景の綺麗なレストランも予約するからさ」
私はただ幸運だったのだ。脩二の震える手を握り返して微笑んだ。
「楽しみにしてる」
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