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「敢えて」という毒物または劇物
本当はこうした方が喜ばれるとわかっているのだけれど、ここは敢えてこうしています。そういうことって、創作に限らずありますね。敢えて強い言葉を使う。敢えて冷たい態度を取る。敢えてうれしくない振りをする……。
こういうのって、敢えてそうしたことを理解して貰える(理解できる)と物凄いカタルシスが得られるのですが、誤解を与えるケースの方が格段に多く、取扱に関しては細心の注意が必要だと思っています。
ミステリーものの殺人の動機の何割がこれに該当するか。悲劇の何割がこれによって引き起こされているか。考えると恐ろしいものです。
という訳で、いつもと違う出だしでこんばんは。一月です。未だに「発見」のネタが下りてこないため、ちょっと真面目な考え事をすることで何かを得ようと画策しております。
この「敢えて」という毒物、主に小説を書き始めたばかりの頃に嵌る方が多いように思います。例に漏れず私もそうです。
散見されるものですと、漢字とひらがなは適度な割合にした方が読みやすいと知っているのに、格好いいからと漢字まみれにしてみたり。文豪ぶって地の文ばかりにしてみたり。余韻を持たせているんですと、曖昧でストレスを感じさせるラストにしてみたり。
そういう「敢えて」がお好きな方もいらっしゃるので需要と供給が噛み合えば問題はないのですが、そうじゃなければ悲惨なもので。かと言って、「敢えて」を全部失くしてしまうとなんだか味気なくなってしまうのも事実。
「敢えて」の部分がその人の根幹に関わる、信念だという場合も大いにあるかと思います。
私が最近やった「敢えて」は『苗木萌々香は6割聴こえない世界で生きてる』の萌々香の性格と出だしです。
萌々香は片耳難聴であることと環境や気質から、神経質で後ろ向きな性格をしています。そんな萌々香が成長していくのがこのお話の肝ではあるのですが、実際「受ける」性格ではないよなぁと思っていました。
また、そんな萌々香が陰鬱な気持ちで学校へ向かう出だしは、とてもキャッチーなものとは言えない。そのことは十分わかっていました。
でもねぇ、萌々香には片耳難聴の現実を背負って欲しいんだよね。最後に同じようなシーンを入れることで萌々香が成長したことを表現したいんだよね。そんな気持ちで私は『苗木萌々香は~』を書きました。これが毒物になったのか、良い効果をもたらしたのかはよくわかりません。
(序盤で切られた方もいらっしゃるんじゃないかなと思っています。そんな萌々香に共感してくださった方、成長を見守って下さった方ありがとうございます!)
ちなみに、自分的に「敢えて」をできる限り取っ払ったのが『龍神は愛する者のために命を賭す』です。恋愛をど真ん中に持って来れてないのは、「敢えて」ではなく私の限界です(;^ω^)
次の物語は「敢えて」とどう向き合いましょうか。現時点では特に何もネタが下りてきていないのですが、だいたいいつもの文字数に達してしまいましたので、今日はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。
2023/10/9
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