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「陸上やめたけどさ」
「おう」
「体力付いたし、力も付いたし、強くなったよ」
「そうだな」
「力仕事は僕やるから、頼ってよ」
「今度な」
正直、負けたのはすごく悔しかった。それを見て僕を笑った部活仲間にも正直腹が立っている。
でも、その気持ちを整理したくて作り始めたはずのシチューはすごく美味しくて、僕の心をいつのまにか温めてくれていた。
最後は父さんが作ってくれたけど。
「シチュー、美味しいな」
「うん、美味しいよ」
これ以上どんなに頑張っても、早く走れるようにはならないかもしれない。でも、もうどうでも良かった。
次は母さんの料理をとことん突き詰めてみようか。
あの時みたいに父さんが頭を雑にガシガシと撫でるから、そんなことを考えていた。
<了>
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