クリームシチュー

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「残りは作ってやろうか」  思いもよらない提案に、断るべきなのか、受け入れるべきなのか。決めかねて、気づけば頷いていた。椅子を持ってきて、父の背中を眺める。楽しいんだろうな、という感想が浮かんできたのはきっと父の横顔のせいだ。  唇が少し緩んでいる。 「なんで、いつもクリームシチューしか作らないの」 「そうか?」 「そうだよ」 「母さんより上手く作れるのがこれだけ、だからかなぁ」 「そう」  途切れ途切れの親子の会話は、側から見ると不仲なの? と言われそうだ。 「部活、辞めたのか」  父がルーを割り入れながら、こちらも振り返らずに尋ねる。それが知りたくて、のこのこキッチンまで来たのかよ。なんて、悪態を吐きたくなった。 「やめたよ」 「あんなに楽しそうだったのに」 「向いてなかったんだ」
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