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「できたぞ」
「ありがと」
いつのまにかトーストされたパンと、クリームシチューが目の前に置かれる。
「いただきます」
手を合わせて、口に頬張ればホタテの出汁が滲み出たクリームシチューは優しい甘さが広がっていく。ホクホクのジャガイモに、とろとろの玉ねぎ。それぞれの野菜が、自分たちの良いところを存分に口の中で披露していく。
鶏肉を齧れば、ぷりんっと口の中で弾けた。
「美味しいね」
「そうだな」
「言いたいことあるならはっきり言えよ」
トーストを口に入れると、バターの味がじゅわりと広がった。
「好きならやればいい。誰に勝てなくても」
「好きじゃないよ別に」
そう、好きじゃないから。
ただ、あれだけのことで心が折れてしまった。
コッテリとしたクリームシチューが舌にまとわりつく。このコッテリ感の理由を知りたくて、見ていたのに。秘密は、見逃したらしい。
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