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結局その日は、まぐろ用のグッズを買いに行くことで一日が終わった。
寝床やトイレを準備してあげると、まぐろは控えめに鳴き私の足にすり寄って来る。
傷はまだまだ治りそうにないが、そこまで悪化している様子もなく。走り回るころはないけれど、元気にあちこちを歩き回っている。
可愛らしいその姿に癒される一方で、私の問題は何一つ片付いていないことに嫌気がさす。
今日は休むことも出来たが、明日は出勤しなければならないだろう。
「……はぁ」
そんなに仕事は嫌いじゃなかったけれど、真城くんのことを考えると憂鬱な気分になる。
彼のことは好きだった。
何でも私のせいにして言い訳ばかりだったけれど、それでも好きだったのだ。親友からはあんな男止めた方が良いと言われたが、本当に彼女の言う通りだった。
恋は盲目とはよく言ったもので、現実が見えた今なら分かる。真城くんはマジで最低な奴だ。
思い出すだけでも頭に来る。あと3発はぶん殴ってやれば良かった。
「次の仕事が見つかるまでは我慢しなきゃ」
パッションだけで動く歳はもう終わった。真城くんに逢いたくないからと言うだけで、仕事を辞めることは出来なかった。
明日の仕事の準備をしていると、まぐろが私に近付いてくる。そして、ぱたりと倒れて横になった。
頭を撫でればゴロゴロと喉を鳴らす。無邪気なまぐろに癒されていると、スマホから着信音がした。
「げっ」
番号は会社の外線だった。朝、休むことは伝えたから、夜になって電話がかかって来る理由が分からない。嫌な予感がした。
とは言え、この電話を取らなかったら明日になって何を言われるか分からない。いやいや通話ボタンを押すと、相手はかつて私の教育係だった黒木さんだった。
「蒼井さん、大丈夫? 今日休んだって聞いたけど」
「大丈夫です。御心配おかけしてすみません」
「いや、それは大丈夫なんだけど……福智が心配してたよ?」
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