きっかけは忘れ物

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 そんな試験攻略のための、授業の受け方をマスターした私の成績は、自分で言うのもひけらかすようで好きではないが、一学年で10クラスもあるマンモス高校で、学年でトップテンを誇っている。  試験後に、毎回、廊下に張り出されるトップ100の氏名が書かれた成績順位表に、自分の名前である「福本明日花(ふくもとあすか)」の文字を見つける時の高揚感は、なんとも言えない。  今回も高得点を取り、自分の名前が、張り出されるためには、絶対に、あの要点メモが必要なのだ!  私が、ここまで、学校の試験の高得点に固執しているのは、志望大学である帝統大学の指定校推薦の枠を勝ち取るためだ。この推薦を受けれれば、ほぼ、確実に大学合格であるし、何より冬にある大学入試を受けずして、秋には大学合格が決まるのだ。    早々に帝統大学合格を決めて、大学入学までは、楽しい高校生活を送るのだとそう心に決めている。とは言え、今まで、高校生らしい、遊びらしい遊びをまともにしてないから、そもそも何をすれば良いのか分からないのは、今は置いておこう。  高校なんて、ただの通過点だ。  高校時代を友達とチャラチャラ過ごしたり、ハメを外したりして、無駄な時間を過ごすよりは、少しでも偏差値の高い、所謂良い大学に行った方が良い。  言わずもがなだが、指定校推薦には、成績優秀者が選ばれる。今まで、高校生らしい、少し羽目を外した生活もほとんどすることなく、真面目に過ごしてきたのも、指定校推薦で、帝統大学に行くため。  学歴社会は終わったと言う人もいるけれど、そうだろうか。  テレビ番組や雑誌でも、『〇〇大卒のインテリ』とかよく聞くフレーズではないか。  この先の将来、ずっとついて回る最終学歴ならば、良いに越したことはない。  それなら、指定校推薦で、少しでも早く確実に、合格を勝ち取りたい。そう思い、私は、今までの高校生活を真面目に過ごしてきたのだ。  
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