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私は、ゆっくりと便箋を閉じて、封筒の中にしまった。そして、リボンのついたラッピングされた袋を開けると、たくさんのCDと綺麗なオレンジ色のイヤホンが入っていた。
「シエル……」
私は、まさか突然こんな形で、シエルとの授業が終わるとは思ってもいなかった。あの時間は夢だったのではないか、そう思ってしまうほど、突然に終わりを告げられた。
ついさっき、学校に向かっている最中、これは、もしかしたら、恋かもしれないなんて、浮かれていたのに、いきなりフラれてしまったような感覚だ。
私は、今、現実に起きていることが受け入れられず、プレゼントのCDとイヤホンを手にしたまま、呆然と立ち尽くしていた。
ーーシエル、せめて、最後の別れの挨拶くらい、直接言いたかったよ……
ーーあの卒業式の約束は?
そんなことを考えていると、シエルとの授業の時間が、いや、シエルという存在が、私にとって、本当に尊い大切な人だったことを思い知る。一緒に過ごした時間は短かったかもしれないが、密度の濃い時間を過ごして、誰よりも私は自分のことを話し、彼も私のことを理解してくれていた人なのかもしれない。だからこそ、彼と出会ってからの私は、見える景色、世界が、まるで花が咲いて、色づいたように、キラキラと見えていたのだ。
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