その日は突然に

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 私は、知らなかった事実を受け入れるために、もう一度、繰り返し、シエルからの手紙を読んで、頭の中で情報を整理した。  まず、シエルは、芸能コースの10組の人だった。これは、私が、顔も見たことないのも納得だ。私は、特進コースに所属していて、芸能コースの人達は、住む世界が違う人だと思っていたし、ミーハーでもないので、特に、どんな人がいるのかとか興味を持ったりもしていなかった。  次に、シエルは、モデルさんと言う事実。これにも驚いたが、考えてみれば、納得の容姿をしていた。180センチを超える長身に、あの透き通るような瞳、ハッキリとした目鼻立ち、スラリとした長い手足に、鍛えられている肉体、どれもこれもモデル体型そのものであった。私が、もっと流行とかファッションとかに詳しければ、シエルの正体に気づいたのかもしれない。    最後に、まさか、あの忘れたと思っていた数学のメモは、凛が、私のいないところで、抜き取っていたとは、本当に気づかなかった。そして、あの出会いは、ある意味、シエルによって仕組まれていたということ。思い返してみれば、あの初めて出会った日に、学校に着いてから追いかけられたような気がしたのも、シエルに待ち伏せされていたのかもしれない。あの数学のメモを探しに行って、シエルと会った直後に三人で話した時、なんだか、凛と紗弥の反応がおかしい気はしたのだ。本当は、二人とも知っていたのかもしれない。知っているけれども、私が言ってこない限りは、触れないでいてくれたのかもしれない。  シエルからの手紙を読んで、私は、『大切なものは目に見えない』と言う言葉が好きだと言いながら、自分自身が、その考えとは真逆の行動をしているのだと認識した。学校で過ごす一日の中で、一番長く時間を共にしている凛と紗弥には、全くもって、心を開こうとせず、自分のことは話さず、だいたい成績が同じくらいの人と、勝手にカテゴライズして、ただただ一緒に行動する人として、付き合っていた。それでは、二人の本質的なものは何も見えないし、何も築けないので、モノクロの世界で生きていて、当然なのだ。  
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