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眩暈
ドキドキドキドキ
ドキドキドキドキ
ドアの前に着き
最後に服を整えて深呼吸すると
ドアが開いた
中から出てきたのは
あの時、中一の時に凌太が初めて付き合っていた
彼女だった
会ったことは無かったけど
写真で見たことはあった
面影が残っているからすぐに気が付いた
あの頃より
少しだけ大人っぽくなって
素敵な女性になっている
どうして?
「菜々美さん
上がってください」
そう言って
中に案内された
彼女、何考えてるんだろう?
リビングに案内されると
既に
二人がここで生活を始めていることが分かった
”もう
一緒に住んでるんだ・・・”
てっきり
結婚までは
お互いの家を行き来していると思っていた
そこは
二人の生活が溢れていて
既に
新婚生活はスタートしているように見えた
「これ・・・どうぞ」
そう言って手渡されたのは
仲間の写真
小さなアルバムにぎっしり
写真が入っていた
「彼の宝物なんです
私、どなたにもお会いしたことは無かったけど
この写真を見て
話を聞かせてっもらって
だから
さっきも
馴れ馴れしくしてしまってすみません」
凌太・・・仲間を大切に思ってたんだ
あの日から離れていったから
嫌われているって思っていた
「私たち
中学生のころ少しだけ付き合って
私の引っ越しなんかで自然消滅してしまったんです」
知ってるよ
あなたと凌太の関係
一から十まで・・・
「でも
私、凌太のことを忘れられなくて
高校三年の冬
もう一度、凌太にチャレンジしたんです
そしたら
”ちょっと待って”
って言われて
待たされた理由はその時は知らなかった
だいぶん後から教えてもらったんです
菜々美さんに気持ちがあって
ずっと
好きだったのに
友達としてなのか?
女の子としてなのか?
自分の中で分からなかったって
だけど
一度、菜々美さんにチャレンジしたいって思って告白したけど
結局、振られたことで
私を選んでくれたって」
凌太・・・失礼なヤツ
少し
彼女に申し訳なく思う・・・今更
微妙な顔をしている私を気遣うように
彼女は微笑み
こちらを覗き込むようにして話を続けた
「最初、聞いたときは
”馬鹿にしてる!!”
って怒りもあったんです
でも
私、彼の事が好きでしたから
冷静になったら・・・
感謝しました
彼は優しいから
もしかしたら
私の押しに負けて
しょうがなしに
こちらを選んでくれたかもしれないけど
貴方への想いを引きずったまま
こちらに来たのではなく
しっかり気持ちにケリをつけてから
こちらへ来てくれた事
それに
後からそのことも隠さず教えてくれて
彼らしい
誠実で
優しくて
素敵だって思って
より好きになれました
菜々美さん
あの時
しっかり彼を振ってくれてありがとうございました
貴方のおかげで
今に至るわけです・・・
私たち
来月、結婚するんです」
あの日だ・・・
彼女は
あの最後の日の事を話しているんだ
凌太は私を好きだった
きっとあの頃から
私も彼を好きだったのに
いや
もっと前からなのかもしれない
好きだったのに
逃してしまったんだ
あの日
私が私自身の気持ちに気が付けていたら
私が私の気持ちに素直になれていたら
変わっていたかもしれない
凌太と私
凌太と彼女
あの日
どちらとも決まっていなかった未来
もしも
もしも
凌太と私の未来があったら
あったとしたなら
私は彼と
幸せになれたのだろうか?
こんな風に
目の前の彼女のような
幸せに充ち溢れんばかりの笑顔で
かつての恋敵に
こんなにおいしいルイボスティーをご馳走できたのだろうか?
眩暈がしてきた
この失ってしまったものの大きさに
初めて
胸の奥を締め付けるような苦しさが増し
呼吸も辛くなってしまって・・・
苦しい
苦しい
呼吸が・・・できない
気が付くと
体が動かなくて
目は開いているのに
目の前が見えなくなって・・・しまって・・・
頭の奥で鐘を鳴らすような
激しい頭痛がおさまると
私はゆっくり瞼を開く
私、もしかしたら毒でも盛られたのかな?
だったら・・・私、今死んでる?
妙な疑いを彼女に持ちながら
ぼんやりした視界が
しっかりしてきたころ
あたりを見渡す
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