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幼馴染
今日、私は大きな喪失感に気が付いた
”彼が好きだ!!”
彼というのは
幼馴染の凌太(りょうた)
小・中・高と同じ学校だった
兄弟のように
いるも一緒だった
登下校は
小学校・中学校の頃の仲間の中にも
高校に入って新しくできた仲間の中にも彼はいた
でも
家が近いから
登下校はいつも一緒
二人で
彼に彼女が出来ても
それだけは変わらなかった
そのせいで
誤解を受けて凌太と彼女の間に亀裂を入れたこともあった
「良かったんじゃない?
私達に嫉妬するなんて
見る目ない人だったら
これから先もいい関係になんてなれないよ
凌太と私は兄弟みたいな関係なんだから・・・それが分からない子は無理だよ」
そう言って
失恋後の凌太をよく慰めた
ワガママで強引な私に
優しい凌太はいつでも優先してくれた
だから
なんだかんだで
いつも一緒にいられたんだと思う
高校三年の冬
街はクリスマスで賑やかで
何もなくても
心が弾んでいた時
私と凌太は二人で買い物をしていた
あの頃は
珍しく凌太に彼女がいなかった
だからか?
クリスマスという大切なイベントを
私の憂さ晴らしに付き合って
長い長い私の買い物に
何時間も付き合ってくれた
勿論、荷物も全部持ってくれていた
「ねぇ
あのカフェで休憩して帰ろう
今日、付き合ってくれたお礼に
私がおごるから」
”ちょっとはご褒美でもあげなきゃね”
流石の凌太に悪いと思って
私は提案した
雑誌に載っているようなお洒落な有名店ではないけど
古さが優しい雰囲気を出している
昔ながらの喫茶店に入った
私は
レモンスカッシュ
凌太は
ホットミルクを注文した
凌太はいつ夏でも冬でもホットミルク
「こんなに買い物して
お母さんから叱られるよ
それに
こんなに遅くに帰ったら・・・」
凌太が帰りを心配するのは
母の気性の荒さをよく知っているから
心配しているようだが
今日の買い物は
父のカードからだから
全く心配なかった
ま、少し帰りが遅くなってしまったことは
叱られるかもだけど・・・
「お父さん公認だから
大丈夫なの!!」
膨れた顔でそっぽを向く
「あっそ」
そう言って凌太は
いつもの様ににっこりと笑顔で包み込む
凌太のこういうところが
女子に受けるんだろうな・・・
凌太は両手で抱える様にカップを持った
指先しか見えないくらいに袖を伸ばしたニットは
女子のようで・・・
中世的な顔立ちと
その仕草から
誤解を受けやすいから
色々と苦労してきたのは
私はよく知っている
そして
こう見えて実は
肉食系男子だってことも・・・
凌太は小さな頃から何度もスカウトを受けるほど顔がいい
「アイドルになったらいいじゃん」
そんな声は、よく聞いた
私は皆とは真逆に茶化していた
だって
現実になってしまいそうで怖かった
きっかけさえあれば
そんな可能性は十分にあったから
だから
嫌だったから
茶化して
バカにして
そんな話
無くしてやった
きっと怖かったのは
凌太が遠くなって・・・
凌太の優しさが
私のものでなくなるから・・・それが嫌だった
恋愛感情ではない
彼に彼女が出来るたびに
やきもちを焼くことだってない
だって
一番は幼馴染の私だったから
彼女になる子には
最初にそれは確認してたし
理解のある子しか付き合えなかった
凌太には面白半分で恋バナを聞いた
だって
モテるから
仲間の誰よりも恋愛していたから
事細かに話は聞いた
私達は、恋愛ドラマを見るような感覚で根掘り葉掘り聞いた
今、思うと
歴代の彼女さんには申し訳ないけど・・・
凌太は私たちの興味から逃げることが出来なくて
いつも
観念したように話す
私達の特に私のお願いは絶対だったから
淡々と包み隠さず話が進むから
セクシーな小説の朗読を聞いているようで
たまに
想像が効きすぎて
凌太が色っぽく見える日もあった
私や
仲間たちは、それに
よく興奮していた
私たちのそんなやり取りは
ずっと変わらなかったし
変わらずにあり続けるものだと思っていた
だから
この優しい時間が
当たり前すぎて
私は適当に
凌太の優しさを鬱陶しい時もあった
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