見えない敵

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アパートに帰ると、キンキンに冷えたビールを喉に流し込んだ。 心地よいアルコールがしみる感覚が体に走った。 感覚が研ぎ澄まされたような気がする。 今のところ気配は感じない。 そのまま、ダラダラと晩酌を楽しんだ。 酔っ払って机に突っ伏していた慎二は突然気配を感じた。微かな音が耳に届く。甲高い連続した音。聞き覚えのあるあいつの気配。 それを振り払うかのごとく、顔周りの空気をひっかき、投げるようにしながら目を覚ました。 気配が消えた。 耳を澄ます。 やはり感じるあいつの気配。 どこだ。どこなんだ。 目をこらすがやはり見えない。 気配だけなのだろうか。いや、そんなことは無い。必ず現れるはずだ。 30分くらいしただろうか。 だんだんとこの時間が馬鹿らしく感じてくる。明日も仕事。ポンコツ上司の尻拭いをしなくてはならない。こんなことに時間を取られるのはもったいない。 アルコールのせいもあって大雑把な思考回路になる。毎日のことだった。 もうしらん! 布団を頭までかぶりベッドに横になった。 次の日目が覚めたらまたやられていた。 今日は布団から出ていた足を3箇所と顔を2箇所をやられていた。 くつを履いていると、壁に真っ赤に膨れ上がったあいつがいるのが見えた。 慎二の視線に気がついたのか、甲高い羽音を奏でながら部屋の奥に飛んで行ってしまった。
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