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「私…うちがそんなに困ってたなんて知らなかった…」
父さんは、私の顔を見てフフッと笑った。
「おまえが生まれた頃には、私の体も治っていた。
だから、母さんもその頃からは仕事もやめて、家事に専念してくれた。
おまえが生まれてからは、本当に何もかもが順調に進んだよ。
言ってみれば、おまえは福の神みたいなものだな。」
その時、私は母の言葉を思い出した。
私が生まれた時、父さんが『福子』って名前を、そして、母さんが『理恵子』って名前を考えて、結局、じゃんけんで『理恵子』に決まったって…
福子はきっと福の神から考えたんだろう。
ストレートな父さんらしいけど…母さんがじゃんけんに勝ってくれて本当に良かったと思った。
「そういえば、私より母さんの方が福の神って感じしない?
ぽっちゃりしてて、にこやかで…」
「確かにそうだな。」
でも、病気がみつかってから、母さんはみるみるうちに痩せていった。
ただ…それでも、母さんは弱音を吐くことは一度もなかった。
お見舞いに行くと、いつも笑顔で出迎えてくれて…
(あ……)
そうだ…
あの時、何か食べたいものでもないかなって思って、母さんに聞いたんだ。
「何かほしいものない?」って。
そしたら、母さんは少し考えて…
「赤いドレスが欲しいわ。」って答えたんだよね。
あの時は、考えてもなかった答えが返って来たから、すごくびっくりしたよ。
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