赤いドレスの女

「どう？良いの撮れた？」

「う、うん、ありがとう。
ところで、みちる…さっきあのへんにいた赤いドレスの人知らない？」

「赤いドレスの人…？さぁ、見てないけど…」

あんなに目立ってたのに…
見てないなんて、みちる…写真撮るのによほど必死になってたんだろうな、きっと…

その時、私はそう思ったのだけど…
そうではなかった。

「ねぇ、あのあたりにいた赤いドレスの人、知らない？」

「赤いドレスの？そんな人、知らないわ…」

その後、誰に訊いても、あの赤いドレスの女性のことを覚えてる人がいなかったのだ。

それに、私も…あのドレスのことははっきりと覚えてるのに、ドレスにばかり気を取られていたせいか、あの人がどんな顔だったか、まるで記憶がなかった。
ただ、若かったことと、綺麗な人だったような気がするだけ。