赤いドレスの女

7/15
前へ
/15ページ
次へ
「あのね……」 言いかけて…その口をつぐんだ。 そんなこと、父さんが信じるはずがない… 母さんのあのドレスを着てた人を見たなんて言っても、見間違いだって言われるのがおちだろう。 「なんだ?」 「え……その……か、母さんはなんでドレスなんて欲しがったんだろうね?」 それはもう今までに何度も口にした質問。 だけど、父さんは一度もそれに答えたことはなかった。 「それは……一度くらい、華やかな格好をしてみたかったんじゃないか?」 「え?」 父さんが答えた言葉が意外で、私は反射的に聞き返していた。 「母さんだって、女だ…」 そう言った時の父さんは、とても苦しそうな表情をしていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加