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第10話
そして、トウカからの連絡は途絶えた。
あれほどまでに深く、トウカを傷つけてしまった僕の方から、連絡を取る勇気なんてもちろん無かったし、トウカも僕へ接触しようとはしなかった。時折学内で遭遇することがあったけれど。
トウカは不自然なほど、僕を見ることはなく僕に視線も向けず、僕に挨拶することもなくただ、無表情を保って、僕の横を足早に通り過ぎていくだけだった。
明確な破局の言葉は無かったけれど、これで完全に終わった…そういうことなのだろう。
最初は、何があったのかと僕とトウカを困惑した顔で見つめていた奴らも
それが1週間、10日と続くうちに、破局したのだろうと納得したようで
しばらく治まっていたトウカへの告白合戦は再開されたようだ。
以前の誰にでもほほえみを向ける、トウカも人気だったが、今のように陰のあるどこか悲しげなトウカの姿は、彼女の魅力を更に増しているようで、その人気は更に拍車がかかっていると、誰かが言っていた。
そしてボソッと言葉を付け加える。
「お前、本当に、これで良いのか」
エンドウトウカは付き合いが悪くなった。
エンドウトウカは休日、誰からの誘いも受けなくなった。
エンドウトウカは誰も近づけなくなった。
そういった噂が耳に入るようになったのは、あの間違えてしまった日から既に3ヶ月も経過した頃だった。恋人たちのシーズンが近づき、誰もが浮ついた気持ちになる頃、やはりトウカは相変わらずの絶大な人気を誇っていたようで、クリスマスだからと連日のお誘い攻勢を受けていると聞いた。
彼氏が居なくなった初めてのクリスマス。あわよくば…
そう考えた男たちが、今まで以上に必死に、しつこく、何度もお誘いをしているのだという。
しかしそれに反比例するように、トウカはどんどんと付き合いが悪くなり、今まで一緒にでかけていた友人たちとも、ほとんど遊びに出かけなくなったという。
僕のせいなのだろうか…
あの日から、そう思わない日は一度もなかった。
笑顔のトウカが失われ、柔らかい空気に包まれて居たトウカが失われ、光り輝いていたトウカが失われ、かけがえのない安らぎだった時間が失われ、幸せだった時間が失われたあの日から僕はずっとどうすればいいかを考え、そして何一つ答えを出すことが出来ないままだった。
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