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 それから庭で遊んでいた子どもたちを呼び戻して、全員で茉莉香が作った昼食をいただくことになった。  ダイニングテーブルとは別に子どもたちのために用意されたローテーブルに、一口大に切り分けられたローストチキンがそれぞれの皿にのせられる。  大人の皿にはチキンにローズマリーが添えられた。ロメインレタスとベーコンのサラダにオニオンスープ、カボチャのキッシュにバゲット、ジェノベーゼとポテトのパスタ。次から次へとおしゃれに盛り付けられた皿が並べられる。 「すごい、これ全部茉莉香さんが作ったの?」  友梨が驚いて言うと、茉莉香はエプロンを外してテーブルへやってくる。 「急いで作ったからたいしたことなくてごめんね? でもお野菜は新鮮だよ。私の叔父が無農薬の菜園をやっていて、毎週送ってくれるの」  椅子に座ると、茉莉香は子どもたちのテーブルに顔を向け、全員が座っていることを確認してから手を合わせた。 「それじゃ、いただきます」 「いただきます」  みなが口々に言う。友梨もそれに倣い、手を合わせる。ちらりと見遣ると悠心も小さな手をきちんと合わせていて、内心ほっとする。  食事は、和やかに進んだ。  会話の内容は、もっぱらサッカーのことだった。美優が大翔に毎週の練習後に『サッカーノート』を書かせていると言うと、千佳も「うちもやってるよ!」と声をあげる。 「なんでもいいから、練習で取り組んだことを書かせてるよ。コーチからのアドバイスとか、上手くできたことや失敗したことなんかも」 「そうそう、あとから見返せるし、客観的に考えられるようになるからオススメだよ」  美優が友梨の方を見て微笑む。 「悠心くんはきっとこれからどんどん伸びていくと思うから、早めに習慣化しておく方がいいと思う。あとは食べた物や睡眠時間なんかも記録しておくといいよ」 「みんな、そんなふうに努力してたんだね」  友梨は感心して言う。 「友梨さん」  茉莉香が口を開くと、視線が集まる。 「子どもだけじゃなくて、大人が学んでいかなきゃいけないことって、結構あるよ。例えばサッカーのルールって、友梨さんは完璧に把握してる?」  友梨は気まずい思いで首を横に振った。 「それが当たり前。だってサッカーの経験者か、スポーツ観戦がもとから趣味でとかじゃなければ、ルールなんで知らなくて当然だよ」  茉莉香は友梨を見ながら優しく微笑んだ。 「ね、だから大人も学ぶの」  他のママたちも、揃ってうなずいている。  一軍に居続けるために、子どもだけじゃなく親にできること、それをみんなは最初からやっていたんだ。  友梨は無知だった昨日までの自分を恥ずかしく思った。何もしないで一軍昇格を夢見ていただけだったなんて……。 「そうだ、サッカーを題材にした漫画とかでも十分すぎるくらいの知識を得られるから、オススメのタイトルをあとで友梨さんにメールで送るね。よかったら悠心くんも一緒に読んでみて」  茉莉香は炭酸水の入ったグラスを傾けて華やかに笑った。
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