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サプリメントを購入するようになってから、1ヶ月が経った。
悠心は購入から半月ほどしたころ、チームの一軍に昇格した。
ショッピングモール内のカフェに入ると、一番奥のテーブル席に茉莉香の顔を見つけた。
友梨が小さく手を振ると、茉莉香も微笑んで手を振り返す。
レジカウンターでアイスカフェラテを注文し、商品を受け取って友梨もテーブルへ向かった。
「ごめんね、お待たせ」
「ううん、ちょっと早く着き過ぎちゃっただけだから気にしないで」
茉莉香はテーブルの上に開いていた手帳を閉じ、それからコーヒーカップに指をかける。
「悠心くん、調子いいみたいだね。コーチも褒めてたよ」
「ありがとう。悠心も練習がすごく楽しいみたい。星凪くんたちと一緒に練習できるのが嬉しいんだって」
友梨がそう言うと、茉莉香は友梨の顔をのぞき込むようにして艶やかに笑った。
「友梨さんも表情がすごく明るくなったよね。今まではちょっと遠慮っぽかったけど、やっぱり、その人がいるべき場所ってあるんだよ、友梨さんにとってのそれが今の場所だったってこと」
「茉莉香さんのおかげだよ。あの日、茉莉香さんが私に声をかけてくれたから」
「そんなぁ、私はただちょっとだけ友梨さんの背中を押しただけ」
茉莉香は恥ずかしそうに顔の前で手を振る。
「そうそう、来月から区が主催する公式戦の予選が始まるでしょ、それに向けて自主練を組みたいと思っていて。先週、星凪が公園で会ったとかで新しいお友達を連れてきたんだけど、その子が入ってるチームが結構強いの。その子もすごく上手でね。だからお母さんの連絡先を聞いて、お友達になっちゃった。今度、合同で自主練してくれるって。星凪にも上には上がいるって知ってほしいし、ちょうどいい機会だと思わない?」
「そうだね。すごくいいと思う」
区の主催する公式戦とは、6月下旬頃から夏休み前までの約1ヶ月をかけて、予選からトーナメントで地区内のベストチームを決める大会のことだ。エントリーは区内の小学生チームが対象で、学年ごとに行われる。
悠心が1年生だった去年の結果は、準決勝敗退で同立3位だった。二軍だった悠心はもちろん出場すらしていないが、友梨も応援席で手に汗を握ったのを覚えている。年に一度の大きなイベントだった。保護者たちも自然と熱が入る。
友梨がうなずくと、茉莉香は嬉しそうに瞳を輝かせた。
「だよね! うちのコーチにも来てもらいたいから、ちょっと今連絡しちゃうね」
茉莉香はスマホを手に取ると、操作して耳に当てる。しばらくその姿勢で待ったあと、話し始める。
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