アオハ君は推されたくない。

新しい推しが、できました。

「ユリどうだった？！うち当たった！！」

マルちゃんからのメッセージが来て、慌ててユリも自分の当落を確認する。締切りギリギリに2人で応募した STELLA(ステラ)のデビュー記念握手会だ。

「う、わ……当たった！！！」

思わずクッションにうずくまる。まだ推すと決めたグループのイベントではないが、ヲタクたるもの「当選」の2文字には感動する習性なのだ。そもそも、このタイミングで当選しなければこのまま何も生まれないかもしれない。推しとヲタクとは、偶然の巡り合わせで出会い惹かれ合う運命の相手なのだ！

実はユリは、ツアー日程を消化して解散してしまうBlue Mond(ブルーモンド)の残りのライブのチケットを持っていない。もちろん、応募はした。だんだんと人気が出てくると、ついには祈るだけでは「当選」の文字に触れることが難しくなっていくのも、現実。

そんななか、久しぶりに公式から追加の発表があり、数名のメンバーはソロ活動を続けていくらしい。その中には、薫さまの名前もあった。ユリは、薫さまを完全に見られなくなる訳ではないことに、安堵した。それと同時に、どんな熱量でソロ活動を推していくのか？新しい節目を迎え、またユリは少しもやもやし始めていたところだった。

「マルちゃんー！私も当たった！！」

急いでメッセージを返信する。
興奮したマルちゃんからも、またすぐ返事がくる。

「よし、ひとまず元推しの事は置いておいてそっくりさんたちの真相を確かめにいこう！」

「マルちゃん、まだ "元" って言うなよぉー！」

そんな会話ができるユリたちは、少しずつ未来を歩き始めているのかもしれない。デビューイベントは、すぐ今週末にある。イベントが決まれば、何を着ていくのか何を持っていくのか……ヲタクは忙しい。案外、もやもやしている暇なんてないのかもしれない。