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さて、残るは何故かユリと接点がある人と、あるかもしれない人。トークコーナーの進行はすすむ。
「リアコじゃないなんて言わせない♡リアコ大歓迎、RENです!メンバーカラーはピンクだから、よろしくねッ!」
「きゃぁぁぁー!」
アイドル慣れしたユリたちにとっては、想定内だった。やっぱり、RENのファンの数はすでに圧倒的に多いようだ。
すらっとした高身長、少し長めの適度な茶髪、なんでも器用にこなせそうな、綺麗な長い指と手。そして、これがデビューイベントだというのにすでにこの上級者向けの自己紹介コメントを自分のモノにしている。
「RENくんのファン多いね、マルちゃん」
「しかも本人がリアコ歓迎しちゃってますからね、ファンの質もなかなかですな」
ついこのあいだ、テレビの前でユリが予想した事はいとも簡単に現実となった。
そして、もともとユリとマルちゃんの推しであったBlue Mondの薫さまは、1番RENに雰囲気が似ている。それなのに、RENの人気度合いを冷静に小声で語り合っているあたり2人の推しはRENではないようだ。推しとの出会いは不思議なもので、常に必ずしも同じタイプにハマるとは限らないのも、ヲタ活の面白さなのだ。
さて、ステージ上では最後のメンバーの自己紹介タイムになる。ユリの鼓動が、そのメンバーカラーを聞き逃さないようにと無意識に速くなる。
「青い春!青春と書いてアオハです!チャームポイントは目元のsexyぼくろです♡へへっ」
「おまえいい加減、自分で言って自分で照れんのやめろよってば?こっちが恥ずかしくなるんだよ!」
もはや毎度おなじみ、リーダーの優星がツッコミを入れるところまでがアオハの自己紹介らしい。
「あ、すみませんしかもメンカラ言い忘れちゃった!想像通りかもしれませんが、僕アオハは青ですー!よろしくねー!」
「きゃあー!」
歓声と笑いに包まれた、優しい雰囲気の会場。この優しい空気が、きっと……。
「これがSTELLAなんだね、マルちゃん!」
「うん、そうだね私たちとても優しいグループに出会えたんだね、ユリ」
なんだか不思議な安堵感に包まれて、ユリとマルちゃんの目には涙が浮かんでいた。生で彼らに会えた喜びもあるが、Blue Mond解散に心をすり減らした後の2人には、この優しいグループの色が身に染みた。
「ちなみに、今日の会場から発売されたペンライト!皆さん持ってくれてますね、ありがとうございまーす!」
リーダーの優星は、MC的なポジションも上手くこなせるらしい。マルちゃんがキラキラした瞳で見つめている。
「メンバーカラーの4色以外に、白でキラキラ光るパターンがありますねー?全員大好きぃーっ!という箱推しの方は、ぜひこの色使ってくださーい☆全員からファンサもらえまーす!」
「オイそれじゃ、みんな白にしちゃうだろ!」
意外とRENがツッコミを入れるパターンも、また新鮮でファンがふざけてペンライトを次々と白にする。
「これじゃあ可愛いアオハ君の、可愛いファンがどこにいるかわからない……」
アオハがふざけてうるうるとした瞳でカメラを見つめると、すぐさま会場のスクリーンにどアップで映される。
「ぎゃああああー!」
悲鳴とともに、ファンのペンライトの色が自分の推しの色へと戻っていく。マルちゃんは、横にいるユリのペンライトをチラリと盗み見たが、まだ点灯させていない。
「それでは、今からデビュー曲を披露するのでぜひ推しカラーにしてお楽しみ下さい!そのあとの握手会で、またお会いしましょうー!」
「ま、またあとで、ねー」
「ぎゃああああー!」
最後の最後にひとこと健太がしゃべったので、また悲鳴が上がった。
メンバーがいったんスタンバイへと消える。会場が、暗転する。暗闇に、無数の5色のペンライトが浮かび上がる。ついに、ユリがペンライトのスイッチを入れる時がきた。
握りしめたペンライトをそっと光らせた色は、『青』だった。
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