推しは推せるときに(以下略)

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ただ泣いていても、しょうがない。 スマホを開けば、同じ気持ちの皆のツイートが溢れている。今はその波にのまれたら感情が崩壊しそうだから、そっと閉じる。落ち着こう、自分の心を自衛するのも大事だ。 「よし、やっぱもう1本飲もう!こもってるのは良くない、買い出し!唐揚げも食べてやるっ!」 「にゃー!」 そうこなくっちゃ!とルナも言っている。 上下スウェットに、すっぴんと泣いた顔を隠すためのマスクとメガネ。歩いてたった2分のスーパーに夜ちょこっと行くには十分だ。 いつもならありえないが、買い出しのあいだだけでも違うことを考えようと思って、スマホは置いていく。家の鍵ひとつ握りしめて、たまたま家にあった最初の1本でほろ酔い気分のユリは、家を出た。 マンションを出て、公園の脇道を通り過ぎる。信号待ちでふと夜空を見上げてしまって、まん丸いブルームーンに照らされていることに気付く。Blue Mond を好きになってから、空に月が出ているかどうかを確認するのがすっかり癖になっていた。うっかりまた反射的に涙が滲んでしまったので、軽く下唇を噛み、視線を地上へと戻す。信号が青に変わったことと、すれ違った夜のお散歩中の可愛いワンちゃんに意識を集中することで、頬にまでは流れずに済んだ。 スーパーの照明はさすがに明るくて、いざ入り口まできて少しだけためらった。 「でも、私は今夜唐揚げをやけ食いしてもう1本お酒を飲んで、なんとか寝るんだ!!」 と、心の中で気合いを入れ直して入店した。 無意識に入り口のカゴを手に持って、数歩進んだ。 「あ、唐揚げとお酒1本ならカゴはいらなかったか……?まぁ、いっかお店空いてるし」 軽めの酔っ払っいのひとりごとも、誰の耳にも届かないくらいにはお客さんも少ない時間帯。 今日は女子力気にしてサラダなんて買わない!絶対に唐揚げ食べるって決めてるんだ! そう思いながらツカツカと惣菜コーナーへ向かう。そして、ユリは絶句する。 「ウソ、ない……!!」 唐揚げがない。それどころか、いかリングもコロッケでさえも!揚げ物全般すでに売り切れている。パックに入った枝豆しか残ってない!枝豆なら、冷凍のやつが家にあるしっ! 考えてみれば、あと1時間もしたら閉店時間。お店にとっては、程よい時間に売り切った、コレが正解の状態。今が何時かとかまで、頭がまわっていなかった。 「どうしよう……私の唐揚げちゃん……」 立ち尽くしていても、こんな時間に追加の唐揚げが出てくる事はない。完全に唐揚げ気分だったユリは、仕方なく隣の売り場に視線をのばす。今から生肉を焼いたり、調理する気力なんてない。 「はぁ……今日は何なの?星座占い最下位ですか?絶対そうだわ、見てないけど」
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