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「皆さんはじめまして!来月デビューすることになりました、僕たち STELLAです!よろしくお願いしまーす!」
ユリは、CM明けのテレビ画面に釘付けになる。爽やかに番組初登場の挨拶をしている、4人組アイドル。まさかの事態にテーブルの上にコーンスープを放置して、テレビの真ん前で穴が開きそうな程に凝視する。
「うそ、うそだ私……見覚えあるよ?!」
ユリの動揺など関係なく、和やかな雰囲気で番組MCが彼らに自己紹介を促す。
まず、リーダーだという爽やかな金髪の「優星」という子が挨拶する。礼儀正しく、元気でキラキラしてる。
次の黒髪の子は、アイドルなのにどっさりした前髪で目どころか顔の上から半分見えない「健太」という子だ。見た目からの想像通り、おとなしいタイプらしい。アイドルやって大丈夫なんだろうか、という謎の母性が目覚めるのを感じた。これも新しい戦略なのだろうか。
ここまでの2人は、知らない子だ。
続く残り2人の自己紹介を、ユリは自分のほっぺたをつねりながら見届けた。
「リアコじゃないなんて言わせない♡リアコ大歓迎、RENです!」
う、うわぁ……今レンって言ったこの子、レンって!!
ユリはテレビの前でパニック。すらっとした高身長、少し長めの適度な茶髪、なんでも器用にこなせそうな、綺麗な長い指と手。レンという名前。間違いなくきのうの夜、スーパーでユリを助けてくれた人がテレビの中にいる。しかも雰囲気が薫さまに似てるから、勝手にお兄さんだと思っていたけれど大人っぽい若者だった。そして何より、デビュー前だというのに自己紹介コメントが上級者すぎる。
「この子すぐファン増えるだろうな……」
ユリが感心しているのも束の間、次のメンバーが自己紹介をする。なんとも確信が持てない、最後の彼が1番気になる人。
「青い春!青春と書いてアオハです!チャームポイントは目元のsexyぼくろです♡へへっ」
「おまえ自分で言って自分で照れんのやめろよぉー?こっちが恥ずかしくなる!」
と、リーダーの優星に言われてはにかんでいる黒髪の、その彼。アオハと名乗ったその人は、きのうマグロパックに値下げシールを貼ってくれた店員さんに似ている。いや、似ているなんてレベルじゃなく顔がそっくりなのだが……おかしい。
「こんな印象的なほくろ、絶対なかった」
イケメンに対する記憶力に自信のあるユリは、確信を持ってつぶやいた。それなのに、こんなに同じ顔の人がこの世に存在するのだろうか……?
「にゃー」
また難しい顔して、とでも言いたげにユリとテレビの間をわざわざルナが通り抜ける。
おかげで我に返ったユリは、色々と気になることだらけのSTELLAの初出演コーナーを、コーンスープを飲みながら見届けた。
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