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二度目に雪乃ちゃんに出会ったのは梅雨の始まる直前。
休日の朝早い時間。私はコインランドリーのベンチでうたた寝をしていた。
すっぴんで、借り物のストールを身体に巻き付けてうたた寝してた。
梅雨が明けたら自分の誕生日が来ちゃうんだって思いながら、雨の音と乾燥機の音を聞いていた。
雪乃ちゃんは五分袖のワンピを着てて、肘から手首にかけての肌の白さが際立ってた。
雪乃ちゃんに再会できて、私は思いのほか嬉しかった。
雪乃ちゃんの千円札を百円玉に両替してあげた。
「シーツ?」
「雨続きで乾かなくて」
雪乃ちゃんの笑顔が儚くて、私は見とれてしまった。
恋する女の子は可愛いんだなあ。
「星くんと仲良くし過ぎて、たくさんシーツを使っちゃったのかと思った」
雪乃ちゃんの名前はしっかり覚えてたのに、星くんの名前の方は忘れかけてた。
雪乃ちゃんの笑顔が儚く見える理由が分かった。
最後に星くんと会ったのはゴールデンウイークなんだって。
お互い新社会人で、頻繁には会えないって。
私は借り物のストールを広げて雪乃ちゃんを包んだ。
ベンチの上で私と雪乃ちゃんの身体をくっつけて、ストールにくるまった。
ストールには持ち主の煙草の匂いが残ってて、雪乃ちゃんに全然ふさわしくない匂いで、ごめんねって思う。
雪乃ちゃんの首筋からはいい匂いがした。すずらんみたいな清涼な香り。
雪乃ちゃんにすごく似合う。
「雪乃ちゃん元気出して」
きっと今日の雪乃ちゃんにとって、私はちょうどいい相手だったんだと思う。
知らない街に来たばかりの頃に言葉を交わして、星くんの話を共有できる相手。
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