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雪乃ちゃんは片手でスマホを握りしめたままだった。
私と繋いでいない方の手。雪乃ちゃんの右手の中で、スマホが振動を始めた。
触れ合う胸と胸、腰と腰。
振動は身体を伝う。
「雪乃ちゃん、お祈りを続けて」
私は甘く噛む。雪乃ちゃんの耳たぶを甘く噛む。
スマホは鳴り続け、振動は身体に伝わり続ける。
その電話に出ないで、雪乃ちゃん。
「ほら、晴れの日みたいでしょ」
黄色い小花柄のシーツは即席の晴れ間みたい。
シーツに守られたふたりだけの空間。
叩き付けるような雨の音。
私の洗濯物が洗濯機の中で回る音。
このまま止まないで。止まらないで。降り続けて。
降れ。
雨よ降れ。
降れ。
降ってきて。
ここに触れて。
シーツの下に隠れて触れ合う唇で、窒息したいの。
《 完 》
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