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梅雨が明けなければいいのにって思う。
雨の休日が楽しみになった。
朝からコインランドリーで雪乃ちゃんを待つ。
朝からシャワーを浴びて、男の子たちの煙草とお酒の匂いは消していく。
雪乃ちゃんは丁寧な暮らしをしている。お嫁さんにしたい女の子。
きっと星くんもそう思っているんだろうな。
毎週、シーツやら枕カバーやらを交換して、洗って乾かして。律儀なルーティーン。
私たちはベンチに並んで座る。
雪乃ちゃんのお仕事の愚痴を聞いて、星くんに会えなくて寂しいっていう話を聞いて、私は上の空で相づちを打つ。
こんなに星くんが大好きな雪乃ちゃんは、なんで地元で就職しなかったんだろうって、ぼんやり思う。
雪乃ちゃんなりの冒険なのかな。
結婚したいって雪乃ちゃんは何度も言う。
結婚前に冒険したくなるのかな。
雪乃ちゃんの手を握ってあげる。ふっくらしてしっとりして、気持ちいい。
梅雨の真っ只中で蒸し暑さが加速してる。コインランドリーの中の温められた空気で、雪乃ちゃんの肌がしっとり汗ばんでる。
ゆるめのあごのラインに崩れて浮いたファンデーション。
どきどきする。舐めちゃいたい。
コンビニのスイーツを買ってきて、植物性脂肪たっぷりのクリームをすくって食べて、笑い合って。
女の子同士の美容情報の交換して。
雨降りの朝のデート。
疲れて寂しい雪乃ちゃんを癒やしてあげるの。
他のお客さんは面白くもなさそうに、洗濯物を機械に突っ込んでは出て行く。ブザーが鳴った後に帰ってくる。
他人のパンツや靴下の回転を眺めながら、私たちは肩を寄せ合う。
乾燥機からシーツを取り出して畳むのを手伝うのも、好きな時間。
熱々のシーツで雪乃ちゃんをくるんでしまいたい衝動を抑えながら、ふたりで端と端を合わせて畳んでいく。
小花柄のシーツと枕カバー。
柄物のシーツの上で抱き合うなんて無粋だと思ってた。
だけど、雪乃ちゃんならかまわない。思い切り甘やかしてあげたい。
雪乃ちゃんの白い肌がピンク色に染まるところを想像して、私は後ろめたくなる。
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