最強な南

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 いつもは質問攻めする女子2人だが、俺が強気で反論したから、俺だけ会話の外でぼんやり聞いている。  船岡くんの弁当箱がアニメのお弁当箱だと気づくと、南を挟んでいるからか。  でしょ?  ねぇ〜  短い単語でクスクス笑う。3人共通のグループラインに感想を打ち合っている。  バイブ音が響き、スマホ画面を見て、冷めた視線を画面に向けている南。  口では言えないことを愚痴っていることは想像できた。 「みなみんもそうでしょ?」  なぜ、共感しないといけないような空気にさせるのか。俺には理解ができない。  口を挟みたいが南の立場を思うと、言葉にできない。不穏な空気を感じている船岡くんは、俯きながら食べている。  最悪なランチタイムにさせたーーーー  椅子から尻を浮かせて女子2人にそして、船岡くんに謝ろうとした時。  ギュッと両目を瞑り何かを決心したみたいな瞳をした南が言う。 「人の好きを笑っちゃ、馬鹿にしちゃいけ・・・ないんだよ」  推しの気持ちがわかるから、船岡くんが責められている言葉を見て、南の堪えていた何かが切れた。 「ゆみっちとあいなんが、アイドル好きなのと一緒なの。アイドルの悪口話されたら、嫌でしょ?」  唇が震え、最後の言葉が震えて、それでも南は右にいるゆみっちと左にいるあいなんに、問いかけている。こんなこと言ったら後で、南は孤立するかもしれない。  けれど、彼女は昔っから、突っ走る性格。  気づけば俺の口角が上がり、船岡くんが、レンズをハンカチで拭くフリをして、目頭を抑えていた。 「山寺さん最強じゃないっすか」  ボソッと船岡くんが呟き、だろう?と目で笑い返して、俺たちは微笑みあう。
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