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未だに気づいてもらえない想いを諦めるなんて俺にはできなかった。
ブブ・・・
ポケットに仕舞ったスマホを取り上げ、手帳カバーを開くと、小学校からの旧友からラインメッセージが届いていた。
【恋はうまくいったかい?】
彼とは中学進学を機に離れ離れになったが、今でもこうやってラインで繋がっている仲で、俺の恋を応援してくれるいい友達。
うまくいってたら、真っ先に彼に教えると約束し別れてから5年が経過している。
*****
12歳の時、ノートの紙を切り、告白文を書いた紙を二つ折りにし、南の机の中に入れた。俺は離れた席から、南がその紙を広げるのを見ていた。
キャー
コクられたー
南の女子友達がテンション高く騒いだせいで、関係ない男子までも集まる事態に。
「O,Tさんって誰よ?」
女子友達数人が差出人のイニシャルから、コクった相手を探しはじめていく。クラスメートが何事かとまた数人集まってさ。
輪の中心に南がいるのに、集まったクラスメートの背中が多くて、表情も声も聞こえない。
英語のイニシャルでコクるなんて方法をしてしまったのを後悔したのは、この後すぐだった。南の隣の席の男子が、手を挙げていたからだ。
席のおとなりさんを好きになることはよくあることで、いちだんと茶化す声がうるさくなった。
「大宮佑だって」
「本当に~他に同じイニシャルの男子は?」
騒いでいた声が静まり返り、輪を作っているクラスメートの視線が俺に向けられる。じっと見つめてくる視線に。
「俺じゃない!!」
力強く首を左右に振ってしまった。
「よかったー」
「女子の人気者だから、告白なんてしないよな?いいよな、モテる奴って!!」
俺を好きだろう女子数人が安堵し、男子からは睨み付けられた。コクった相手が判明したからか、集まっていたクラスメートが離れていく。
やっと、女子友達の隙間から見えた南は椅子に座り、腕枕をして顔を伏せていた。
傷つけたーーー
大宮がコクったと思わせ、恥ずかしくて俺だって言えなかった。
俺に視線を向けた大宮が、近づいてきて囁く。
僕じゃないよと。
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