最強な南

1/7
前へ
/33ページ
次へ

最強な南

 特進クラスには南はいない。南がいるクラスは2-C組。特進クラスから小馬鹿にされているクラスにいる。  隣の男子が束になったラブレターを俺に渡して、  はああああー    と盛大なため息を吐く。 「いつもありがとう」 「ボクも人生で1度は溢れたラブレターを拾ってみたいですよ」  教室に1番早く着く彼は、俺の机の中からぎゅうぎゅう詰めにされたラブレターを目撃している。  毎日の光景となっているラブレター拾い。隣の男子がメガネをくいっと直しながら。  ボクの提案を試してみてはいかがです?  と手招きする。俺は耳を寄せ、隣の席の彼の提案を聞く。 「俺の噂を流す!?」 「妹の恋愛ドラマを見ていてよくあるシーンなんですよ?モテてる岡田くんに彼女ができたと噂を広げれば、ぎゅうぎゅう詰めのラブレターを見ることも、拾うこともなくなるでしょう?」  ド定番な案だが、隣の彼のため息の種が減るならば聞き受けるべきこと。  人差し指を顎に添え考える姿が、名探偵アニメに出てくる頭脳明晰な小学生に見えてきたのは、似ているメガネをしているから。  岡田くんの案に付き合ってくれる相手はいますか?  レンズ越しに彼の瞳が問いかけていた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加