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昼休みまで待ってくれた船岡くん。弁当の包みを持ち立ち上がる俺たち。
教室から出ていくのを女子たちに見られ、ギャーと騒がれた。誓ってそんな関係ではない。
「教室で食べないのは好きな人のクラスへと行っていたわけですか」
なるほど、なるほどを呟く、船岡くんは、俺より18センチも高い188センチ。
長身で色白で七三分けした髪型に黒淵の四角いメガネで歯並びが悪く、たまに、よだれが出る船岡くん。
「惚れるなよ?あと言わないでな」
一応念をおして言っておく。特進クラスが小馬鹿にしていた2-C組へと入室。
****
クラスが違うとかおりでわかる。本のかおりとボールペンのかおりがする特進クラスに対してC組は。
メイクや香水、ワックスがまじったかおりがする。
「山寺さんランチ友達来たよ」
ハーフアップした焦げ茶の髪がさらりと揺れて後ろを見返す。いつも、俺だけなのに、今日は連れがいることに驚いて大きな猫目をさらに大きくさせている。
「岡田くんのお友達?」
いやぁーなんて照れてにやける船岡くん。南の友達が、キモ男とつるんでいるなんてとため息を吐く。
「なるほどですねー」
ん?と小首を傾げている南。意味ありげなこと言うなよな、船岡くん。
「何が、なるほど・・・」
「みなみん、キモ男に話してる」
「ヤバ・・ウケる」
船岡くんに訊ね返そうとした時に、南の友達が割って入る。パンパンと手を叩きながら笑う女子2人に俺は・・・
「俺の友達を侮辱すんな!!」
南の友達に反論し、少し睨みつけながら、向かいの席へと座る俺と、船岡くん。
南が足を伸ばし、俺のつま先を軽く踏みつけてくる。
せ、い、ろ、ん。
口の動きを読み、南を間に3列に並んでいる女子2人は俯いたまま。正論を嫌う人がいるのは知ってる。この場はよくても、困るのは南のほうだ。空気を変えようと口を開きかけた時、右隣で船岡くんが呟く。
慣れてるから平気ですよ
伏せ目のまま微笑を浮かべている船岡くんを見て、南の友達2人に注意したことが、彼のことを深く傷つけている要因だと気づく。
俺も、女子2人とたいして変わらない。
「食べよー」
南が一生懸命明るくしようと努めている。今なら、隠れオタクでいたい彼女の気持ちが、俺にもわかる。
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