最強な南

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 好きな人が同性だと噂を広めるつもりで、船岡くんを連れてきたわけじゃない。 「あのな、山寺さん」  友達のフォローになっていない発言を変えないといけない。  ただ、2-C組のクラスメートが注目しているなかで、告る勇気なんて俺にはない。  大丈夫、大丈夫と微笑む南は、俺を見つめてハッキリと言う。 「岡田くんは男女にモテてるからさ、驚きもしなかったよ。どちらになってもわたしは、応援するのでよろです!!」  1周回って元に戻された俺のモテ話の噂。このままだと、俺は船岡くんをランチに連れてきて、彼との仲を見せつけただけになる。 「山寺さん、ちゃんとお聞きになってください!!」  右隣から船岡くんが、強めの発言をして、大事な話をするのだと強調してくれたが。 「ねぇ、みなみん、ゆうたくんのドラマ観た?」  ゆみっちが話に割って入る。ゆうたくんとはアイドルで数多くいる名前だが、ローラースケートが得意なアイドル。  テレビアプリで再放送しているパイロット恋愛ドラマを彼女たちは見たのだと話す。 「うん。見たよー」  さっきまでギスギスしてたのに、自分達だけ話せないのが嫌だったのか、明るい声で話しかけている、ゆみっちとあいなん。 「ごめんね。岡田くん、船岡くん」  南はたぶん秒で判断したんだ。どちらの会話に入るべきか。俺と船岡くんと南の3人での会話は、急ぐことではないと。  そして両側からじっと見られていたことも気づいて。  ゆみっちとあいなんがライン画面を開いても、南には通知が来なかった。  2人してトーク画面で南のことを悪く書いていて笑っていたのか?  だったら、俺たちに見せている顔は、表向きな顔になるわけだな。  女ってこわ・・・  俺たちは弁当の中身を急ぎぎみで食べ終えて、女子たちの会話を邪魔しないよう、静かに椅子を引き、前方の教室扉から出ていく。
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