プランB 推しを知れ

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プランB 推しを知れ

 クマッたが来る週末を迎えた。推し活の時はアドレナリンが沸くのか、俺がスタンプを連打しなくても目が覚める南。 「朝から元気ないねぇ~」  朝から元気な大声の姉貴に背中をバシバシと叩かれた俺。 「別に・・普通だけど」  小さく反論している俺に、いつも用意していく物が置かれていることに気づく姉貴。  ウィッグ、黒色のチョーカー  姉貴から借りている品々。 「変装しなくてもいいのに、拓哉は恥ずかしがり屋なんだから」  姉貴が言おうとしていたことを母が代弁する。運動神経がよくても部活に入部しなかったのは、少しでも南といたいから。  帰宅部の南と放課後デートなんて夢のまた夢で現実は、バイトに明け暮れる日々。 「素顔じゃ、女子が勝手に盗撮して投稿してるんだよ」  お店に迷惑をかけないために、変装をすることにした。店長もバイト仲間も承諾済み。  短髪黒髪のタケルくん似は、別人の誰かさんになる。 「残念よねぇ~」  姉貴が残念そうじゃない声で呟く。SNSでプチ話題になった【イケメン雑貨店員】写真の投稿。  しかし、南が見聞きすることなどなく、いつも通りの接し方が続いている。 「お母さん、思うんだけどさ、南ちゃん」  いいところで区切った母は、俺のテンションが下がるからと続きを言わない。  知ってるって  南にとって俺は頼れる兄で、何でも打ち明けられる親友。  安心安全な俺
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