プランB 推しを知れ

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 オタク友達の大宮(たすく)と山寺南が一緒にはしゃいでいる姿を想像するだけで、ズキンと胸が痛む。  恥なんて、プライドなんて捨てられたら  南のそばにいられるのに・・・・ ****  バックヤードにまで聞こえてくる幼い子供たちの声を聞き、俺は頬をバシバシ叩いて、今だけは醜い片想いを忘れることにする。 「よろしくお願いします」  背中のチャックを閉めてもらい、頭に被るそれを見つめる。 「岡田くん、適当でいいからね」  着ぐるみを着ている俺に、バイト仲間の河北(かわきた)さんが言う。頭にタオルと首には冷えるシートを貼って、熱中症対策は万全に整えた上で、河北さんのほうを見返して微笑む。 「ガチなオタクが来るんで」  本気でやる。南の推しになってやる。  毎週、朝に見ているクマッたの顔を見てから頭に被って、河北さんの手を掴み、サイン会へと向かっていく。
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