推してる南に恋してる

プランＢ 推しを知れ

　親子連れも多いが、小中学生女子も多く列に並んでいる。河北さんが、インカムマイクでクマッたの登場を伝えると、沸き起こる黄色い歓声とギャン泣きの声。

「みんな、クマッたのサイン会場に来てくれてありがとうクマッ♪」

　可愛らしい声は出している河北お姉さん。

　クマッたは声だししてないキャラクター。語尾のクマッも即興だ。それでも、ギャン泣きしている子がいる。

　着ぐるみだと思われているから泣いているんだ。南に耳にタコができるんじゃないかってくらい聞かされたことを思い出せ！！

＊＊＊＊

「クマッたダンス？」

　はぁぁ、それそれ！！

　クマッた、クマッた、ゆるかわよ～

　手拍子２回叩いて、両手をあげて、腕全体で左右でくねくね動かす。

　仕草はワカメが生えて海の中で揺らいでいる姿そのものだ。

　はじまりは盆踊りから一気にゆるゆるになる仕草をくねくねで現しているのだと、歌いながら教えてくれた南。

「顔で表現できないかわりに踊りで現すの！！最後はね・・・」

＊＊＊＊

　クマッたの曲が流れ南と共に恥ずかしながら踊った過去を思い出す俺。

　完コピしてる

　ヨンリオから派遣されたのよ

　やめてくれ、子供の夢を壊すような囁きは聞きたくないから本気だす。

　並んだ客の視線をわずかな視界で感じながら、鮮明に聞こえる悟るような囁き声。

　パン、パ、パン！！

　パン、パ、パン！！

　手拍子を送ったのは、そばにいた河北さんではない。列の最後尾にいる誰かだった。