プロローグ

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 虎雄おじさんの部屋に通される。そこには取調室で見るような机と椅子が向かい合わせに2脚ずつある。 「虎雄おじさん、家にまで取調室を再現ですか?」  まあまあと向かい側の席に座った山寺おじさん。壁を見渡せば、刑事ドラマのポスターが張られ、ねずみ色の戸棚には、シリーズDVDが陳列されている。 「僕は刑事ドラマ好きなんだよ。警官を志したのはティーを綺麗に注ぐあの・・」  バディが代わっているドラマか。最近は初期のバディと再会したと話題になっているやつだ。親子共々、推しを語る熱はすごい。 「虎雄おじさん、ランプ当てながら話すのやめてもらえません?」  ずっと、俺の顔めがけてライプを照らし続けている。  俺が目を細めて、話の腰を折ると、虎雄おじさんは、すまんすまんと豪快に笑ったあと、真面目な目付きに変わる。 「拓哉くん、ゲロっちまったほうが楽だ」 「南に言わない約束を交わせるなら・・言いますけど」  深々と頷いていて身を乗り出してくる虎雄おじさんの耳に囁いたのだった。
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