10人が本棚に入れています
本棚に追加
ファンシー雑貨店の店員が、本日のサイン会は終了と書かれた立てかけボードを出入り口付近に置きに行く。
「最高でしたよ!!」
色紙2枚を差し出す南は、興奮ぎみに喜びの声をあげている。色紙を受け取りながら、視線を左右に動かして、オタク友達の大宮佑の姿がないことに気づく。
南、一人か?
と聞きたくなる気持ちを抑える。サイン会に集まっていたファン層は女性がほとんどだった。店内には入店せず、通路で待っている可能性だってある。
色紙にクマッたのサインを書いていく。小さく丸い文字で。
クマッた
それだけでじゅうぶんだが、俺は書き加えていた。
ありがとう。クマッた
「ちょ、何してるの?」
河北さんから突っ込まれる。クマッたは話せないキャラクターだから。
色紙1枚を受け取った南は、大きな猫目をさらに大きくさせながら微笑む。
「聞こえてたんですか。なら、よかったです。明日も手拍子しますから!!」
俺は南に助けられていた。ギャン泣きしていた女の子が泣き止んだのも、後方から手拍子をしてくれたおかげ。
もう1枚の色紙には、名前だけを書き、南に手渡しながら深く頷くクマッた。
推しを応援してくれる気持ちがわかったよ。
土曜日は無事にサイン会を終えることができた。
プランB
推しを知ること。
無事に完遂できそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!