プランB 推しを知れ

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 ファンシー雑貨店の店員が、本日のサイン会は終了と書かれた立てかけボードを出入り口付近に置きに行く。 「最高でしたよ!!」  色紙2枚を差し出す南は、興奮ぎみに喜びの声をあげている。色紙を受け取りながら、視線を左右に動かして、オタク友達の大宮(たすく)の姿がないことに気づく。  南、一人か?  と聞きたくなる気持ちを抑える。サイン会に集まっていたファン層は女性がほとんどだった。店内には入店せず、通路で待っている可能性だってある。  色紙にクマッたのサインを書いていく。小さく丸い文字で。  クマッた  それだけでじゅうぶんだが、俺は書き加えていた。  ありがとう。クマッた 「ちょ、何してるの?」  河北さんから突っ込まれる。クマッたは話せないキャラクターだから。  色紙1枚を受け取った南は、大きな猫目をさらに大きくさせながら微笑む。 「聞こえてたんですか。なら、よかったです。明日も手拍子しますから!!」  俺は南に助けられていた。ギャン泣きしていた女の子が泣き止んだのも、後方から手拍子をしてくれたおかげ。  もう1枚の色紙には、名前だけを書き、南に手渡しながら深く頷くクマッた。  推しを応援してくれる気持ちがわかったよ。  土曜日は無事にサイン会を終えることができた。  プランB  推しを知ること。  無事に完遂できそうだ。
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