44人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
普段の彼女は物静かで、オタクなんて恥ずかしくて言えないって顔を両手で覆うくせに、俺の前では明かしてる。
「クマったが来るんだよ!!ヨンリオ界から現れた新星のクマった。ねぇ、たっくんも行こうよ~サイン会!!」
色紙を持って詰め寄る彼女。クマったのために黒髪を焦げ茶に染めてるし・・
クマが、八の字に眉毛を下げて、への字に口を曲げているだけだろう?
たかが、クマなのに・・・・
俺は推しに嫉妬してる。嫉妬心に気づくはずがない彼女に言う。
「俺は行けない」
えーなんて膨れっ面している彼女は普段しないツインテールをするために、髪ゴムを買った。もちろん、クマったグッズ。
観賞用の色紙1枚と保管用の色紙2枚を彼女に返すと、肩を下げてわかりやすく落ち込んでいる。
「南の友達誘えば?」
言ってはいけないことだと気づいたのは、口にしてからだった。
「拓哉のわからず屋!!高校デビューから隠してきたのを言えって?」
17歳でヨンリオより、アイドル派が多いのだと愚痴ってた。
南の家族は、推しの漫画から名付けたアニメオタクで、俺はそんな彼女の幼馴染みで、初恋相手を前に本当のことを言えずにいた。
最初のコメントを投稿しよう!