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 庭にある彼岸花の向こうに若い植木職人がいた。職人が呷った水が喉をつたい、喉の動きに呼応して煌めいた。首の下に覗く褐色の胸板は、艶やかで汗を弾いていた。  蝶をあしらった京小紋(きょうこもん)の着物を着た少女は、縁側の角から青年に魅入っていた。はじめてみる逞しい胸元に体の芯が熱くなるのを感じていた。  ふいに男がこちらを向いた。目が合ったように思った少女は廊下の影に入った。青年は何もなかったように腹掛けを着けると植え込みへと戻っていった。  頬の火照りを感じた少女は、同じものを下腹部にも感じていた。植木を切る青年を隠れ見ながら、少女は右手を(おくみ)から足の根元へと忍ばせた。      火照りの元となる物に触れると、指先がかすかに湿った。さらに押し当てると指先がと濡れ、それで膨らんだ米つぶに触れた。 「んっ」  膝の力が抜けそうになった少女は、瞳を閉じ声を噛み殺しそれに耐えた。 「(あんず)」 「姉さま」  少女はふいに声を掛けられ、気づかれぬよう慌てて衽を整えた。しかしそこに、するりと姉の手が入り込む。背中に姉のふくよかな胸の温かみを感じ、耳朶に柔らかな声が響いた。 「私たちの根は一緒。あなたも私も、同じ一人。感じあえるものも同じ」  恥部の熱が全身に広がり、姉の体に自分が溶け込む感覚に少女は身を委ねた。
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