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 調度品も装飾品もなく掃除の行き届いた十畳の部屋は、襖と障子を抜ける風が古い畳の香りを舞あげていた。その中央に、ぶちまけられた墨汁のように放物線を描き広がった黒髪は、主である杏の肌の白さを際立たせていた。  はだけた半襦袢(はんじゅばん)からは汗の雫を乗せるような鎖骨が露になっていた。そこからなだらかに膨らむ乳房の先は、透明な水に一筆差した紅のように薄く染まっていた。 「はぁ」  色づいた乳房の先を姉(あずさ)の唇についばまれた杏は、息を漏らして身じろいだ。腰ひもを残したまま乱れた腰布(こしぬの)から白い足が伸びる。その間に足を滑り込ませた梓が身を反らせる。杏と梓、互いの濡れた場所が触れあった。 「ああ。姉さま」  杏は梓の足を抱くように腰を動かしていた。その動きに応えるかのように梓の息も弾む。  四本の白い足は蛸足のように絡み合い、擦れた桜貝に似た 肉襞(にくひだ)が刺激しあうように潤った音を立てた。
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