もうすぐ雨が降ってくる

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あたしが死んだのは薄暗い6月の夕暮れだった。 ひんやりと湿った風が半開きの障子を越して吹きかけている。あたしのそばで間抜けにも呆然と立ち尽くしているのはあたしの妹だった。 6つ違う妹とは仲が良くも悪くもなかった。あたしは早いうちに家を出ていったし、大人しい妹はそれまでそんなに懐いていなかった。懐いてないからなのか出ていくときにそっぽ向かれてムカついたっけ。けれど遠くにいても妹が何らかの賞を獲ったなんて聞けばちょっとは誇らしく思ったさ。 あたし?あたしは悪い噂を届けない代わりにいい噂も届かせなかった。どこにいるのか、誰といるのか、何をしているのかわからなかったと思う。誰も知らない場所に誰も知らないように生きていければいいと思った。それなりにうまくいっていたはずだし、うまくいっていたことも知らせずに済んでいたはず。――だから、びっくりしたんだよ。妹がここに来たのは。なんで?どうやってわかったのかな。それともやっぱ姉妹だからあたしと同じ考えだった? ごめんね、と言ってみる。もう伝わらないはずなんだけどやっぱり悪いからさ。ああ、ようやく動いた。石みたいに動かないんだもんあんた……そんなんで大丈夫なわけ。 湿り気を帯びた風にだんだん雨が混じってくる。 雨よ、降れ、降れ。流してしまえ。あたしの血潮が誰にもわからなくなるまで――――
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