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デリケートな問題、その通りだ。まだ17歳の祐斗に説明するには早すぎる、そう思うから一夫多妻制などという生々しい話をしていない。
「……子どもが3ヶ月で生まれるって、その話ならするよ」
それは同時に何人とも何度も交わると言う意味だ。
「一度に何人か子どもが出来る可能性があるってことは?」
「俺にはそんな話、出来ない! あいつはまだ17だぞ!」
サイファは仕方なさそうに頷いた。
「確かにそうだな…… 父親が育児にかかわる時期っていうのも教えてやったらどうだ? 今の祐斗の心細さをなんとかしてやらないと」
その思いから救う手立てがあるだろうか。
「今は時期が悪いんだ。こんなところに来たばかりだし。セナ、お前が焦るな。お前にぎこちなくされたら益々こじれる。いつもの通り。態度を変えるな」
「……ありがとう、そうする」
「さっさと生まれるといいな、活きのいい純血種が。どうなんだ? お前、実の子どもに愛着が湧かないって言えるのか?」
「分からない、そんなこと。けど祐斗との歴史に代わるものなんてない。その思いは本物だよ」
「それをしっかりと祐斗に分かってもらえ」
その後は研究のことについてサイファに現状を確認した。目下の研究の主体は祐斗の寿命についてだと言われた。
「寿命に変化が出ると思うか?」
「少なくとも回復能力があるんだから劣化して行く体を修復して行く能力が生まれるような気がする。ヴァンパイアが長命なのも、そのお陰だからな。ただそれがどの程度のものか…… 今のところ手掛かりになるものが見つからない。マウスは寿命が短いからその結果を見ていくしかない。薄めたお前の血を摂取したマウスがどれくらい寿命を延ばすか。それにかかってるってところだ」
セナは大きく息を継いだ。
「なるべく細かく情報を伝えてほしい。頼む」
「分かってるよ、セナ。近い内に祐斗の体を調べさせてほしい」
セナは頷いた。前に進みたい、少しでもいいから。
サイファが出て行って、セナは祐斗の部屋をノックした。
「祐斗? ここを開けてくれないか?」
しばらく返事がなかったが、ドアが開いた。中に入って祐斗を抱きしめる。
「ごめん。祐斗の不安、俺は気が付かなかったよ。心配するのも仕方ないって思う。でも父さんはお前が一番可愛いっていう気持ちが変わるとは思ってないよ。大切なんだ、お前との今までの時間が」
黙ったままの祐斗が愛しくてならない。
「これを言ってお前がどれくらい安心できるか分からないけど。子どもは妊娠して三か月で生まれる。それから……そうだ、生まれて人間で言えば5歳になるまでは母親が育てるんだ。父親はほとんど育児に介在しない」
「……そうなの?」
「うん。そうだよ」
5歳。ヴァンパイアの年齢で約20歳。少なくともその間は父を独り占めできる…… そう思っただけで祐斗の心が安らいだ。
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