68人が本棚に入れています
本棚に追加
だんらん
祐斗とセナはリュカに聞いてタツキ、アキラの部屋を訪ねた。
「ごめん、荷物の整理に時間かかっちゃって」
アキラの部屋を見回す。タツキの部屋もそうだったが自分たちの部屋に比べて、こう言っちゃなんだがかなりごちゃごちゃして見えた。装飾品が多いのだ。
「良かった、こういう部屋じゃなくって!」
つい本音が口から出た。
「あ、ごめんね!」
「いいよ、ホントのことだし」
アキラが苦笑する。壁にはランプがあり、絵画が飾られ、天井にはシャンデリア風の立派な電灯。あちこちにアンティークな飾り物が施されている。祐斗から見れば、やっぱりごちゃごちゃだ。
「サイファに感謝しなくちゃな」
「うん!」
こんな部屋じゃ、いるだけで窒息しそうだ。部屋にこもることも出来ないかもしれない。
アキラの電話番号をもらって一緒に部屋を出た。セナの部屋でランチを取る。タツキも来てくれると言っていた。
「タツキは機嫌悪かったけど」
「あの部屋じゃ機嫌も悪くなるさ。日本で暮らしてると自分が必要とする物しか無いし。押し付けられた飾り物の中で暮らすのは鬱陶しいと思うよ」
ランチは楽しかった! 祐斗の顔もほころぶ。
「居心地って聞いてもまだ分かんないよね。俺は久しぶりでちょっと勝手が違うって感じだよ」
アキラがそんな話をする。
「俺は行ったり来たりが多いから違和感を感じる暇がない」
とは、サイファ。
「タツキは?」
「日本で暮らした期間が長かったからな。ローグの顔見ながら過ごすのかと思うと正直いるだけで鬱陶しい」
タツキとローグの折り合いは悪いらしい。
「その内また他で仕事を見つけるつもりだ」
途端に祐斗の顔が曇るのを見てサイファがタツキに目配せをした。タツキは言葉を添えた。
「その内にな。何十年かしたら、って話だ」
ヴァンパイアの"時"の感覚が分からない。その人生の中で『何十年かしたら』と言えるほど時間が有り余っているのだから。
タツキは『この部屋が羨ましい』と言い、アキラは諦めたような顔だった。
「あんな部屋じゃなくて助かったよ」
セナがサイファに礼を言う。
「どういたしまして。だいぶローグの機嫌を損ねたけどね」
サイファはにやっと笑った。
ランチを終えて三人はそれぞれの部屋に引き取った。
「タツキ、すぐに出て行っちゃうってことないかな」
そのことが祐斗の心を少し暗くする。
「大丈夫だよ。あいつ、今出て行ったらきっと負けた気がすると思う。そういうヤツだから」
「うん……」
ここの暮らしにどれくらいで慣れるだろう…… それが一番不安だった。
最初のコメントを投稿しよう!