制裁

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制裁

   アルフレッドの部屋をノックする。 「入れ」  父の声がしてセナは中に入った。ソファに座る。アルフレッドはその向かいに座った。 「祐斗は落ち着いたか?」 「まだ来たばかりだし。疲れてると思うよ」 「なにかあればリュカに言えばいい。しばらくいるのだから早く解けこんでくれるといいんだが」 「俺もそう思ってる。時間がかかるだろうけど」  しばらく間が空き、父が言い淀んでいるのに気づいた。 「なにかあった?」  アルフレッドはため息とともに口を開いた。 「アンジェリッタは罪を犯した」 「母上が?」 「マデリーノの殺害を指示したのは、……思った通りアンジェリッタだった」  暗黙の了解で父と自分が承知していたこと。それが明るみに出たのだ。こうなれば放置しておくわけには行かない。 「今、幽閉している。セナ、お前が裁断を下さなければならないよ」 「俺が? え、なんで!」 「後継者候補の母親が同じ後継者候補を殺害した。お前が片を付けなければ共倒れになって大騒ぎになるだろう。アンジェリッタと共に殺害を画策したのではないかと。だからこの件はお前が始末しなければならない」 「ちょっと待って、俺はまだ後を継いだわけじゃない!」 「シバも承知だ。これがお前の初仕事というわけだ」  セナは愕然とした。母の犯した罪を分かってはいたけれど、どこか意識から遠ざけていた。そんなはずはないのだ、と。  実の子でないとしてもマデリーノはリデロー家の息子だ。一族殺しは大罪になる。極刑から免れることなど出来ない。 「俺が母上を……処刑するということなのか?」  セナの掠れた声にアルフレッドは頷いた。沈黙が漂う。  セナはようやく声を出した。 「母上と……話しをしてもいいか?」 「構わない。だが、セナ。救うことは出来ないぞ。承知しているな?」 「……分かってる」 「処刑の仕方はお前に任せる」  ローグがアンジェリッタのところにセナを案内した。どんなに嫌っていても、母は母だ。それとこれとは違う。心が痛い、苦しい。逃げ場がなくて追い込まれているのはセナの方だ。母にはいったいどれほどの覚悟があったのだろう…… なんのために、それが一番聞きたくないことだ。けれどきっと聞かずにはいられない……  
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