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「失礼しまーす。先生、届けに来ましたー」
「おー、さんきゅ。そこ置いといてくれ」
「あ、そだ先生。ありがとうございました」
「あれくらいどーってことねーよ、気にすんな」
「やだ先生イケメン〜! うちの弟たちの次に!」
「はっ倒すぞ」
昼休み、俺はレンとケイのノートを持って例の担任の元へ向かった。場所は古典の準備室である。
ノックをして入り、とりあえず要件をさっさと済ませた。軽く頭をはたかれるが、まぁそれは気にしないでおく。だってうちの弟は可愛いけど顔はイケメンだし。嘘偽りない事実だ。
ん? 俺たちが兄弟だってことは隠してるだろって?
そうなんだけど、何かあったときに頼れる大人が一人はいた方が良いだろうという話になり、その際担任の先生が一番良いのではないかということで、この先生だけには俺たちが兄弟であることを話したのだ。ちなみに先生は、「おけ」という女子高生レベルのフットワークの軽い相槌をかましてくれた。
返事こそ軽いものの、俺たちのことを気遣ってくれているのか度々俺たちが話す機会を設けてくれる。ちょうど昨日のように。
電話で毎晩二人とは話しているものの、直接顔を合わせて話す機会なんて無に等しいので、そういう機会を作ってくれる先生には感謝だ。
もちろん先生は俺と弟たちだけでなく、レンとケイとの仲も取り持ってくれてたりしている。委員会決めの時とか、学級委員長にレンを、副委員長にケイを指名していた。先生が言うに、「学園内でも屈指の人気を誇る二人が学級の代表をやるのが良いんじゃね」とのことらしいが、あれは確実に二人のためだろう。
ついでとばかりに、その時俺も選挙管理委員会に指名された。これは人気ランキングの集計係らしく、「勉強ができる生徒が就いた方が良い」なのだそうだ。人気ランキングの開催期間である夏休み明けと三月は忙しいが、それ以外は暇なので特待生でも勉強できる時間を確保できる、とは先生の言い分だ。当然これも先生が俺たちに気を遣ってくれた結果だろう。なにしろ選挙管理委員は選挙シーズンになると学級委員会との協力が多くなるらしいのだから。
しかもきちんと俺たちの意思を尊重してくれるあたりね。ケイとか嫌だって言ったら普通に他の奴に任せるつもりだったとか言ってたし。まぁ実際のケイは受け入れたけれど。
あの不良ルックのケイがしっかりと仕事をこなす様子を見て、先生もびっくりしたようだ。そうそう、ケイは良い子なんですよ。もちろんレンもね。
本当はここでめちゃくちゃ弟たちについて語り尽くしたいところだが、お昼ご飯の時間も無くなってしまうのでここらでお暇させてもらおう。
「ほんとにありがとうございます。それじゃ、失礼しまーす」
「おー、またやってやるから任せろ」
「ガチで良い先生すぎる……」
「だろ?」
ニカッとホストのような風貌に似合わない笑顔を見せた先生に軽く会釈し、俺は準備室から出た。
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