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三限目終了のチャイムが鳴り、机の中に教材をしまっていると後ろから肩をポンポンと叩かれた。後ろずっと無かったからなんか新鮮だ。
くるりと振り返り、同じように教材をトントンと整えているきざむと顔を合わせる。
「どうかした?」
「いや、時間的に今って昼休みかなーって! そんな感じ?」
「そうそう、三限終わりが休み時間」
時計を見ようと黒板の方を見ると、視界の端でこちらに近づいてくる影。
「学食あるって聞いてたから弁当とか持って来てないんだけど……」
「そういうことなら食堂まで案内するよ」
さらっと会話に入ってきたレンに、きざむは肩を跳ね上げた。先程見た影というのは、もちろんレンのことである。
「そっか、朝俺の世話しろって先生から頼まれてたもんな! えぇと……」
「おれは竹村レンリだよ。よろしくね」
「おー! よろしく! お前も呼び方レンリで平気か? てかお前もやっぱカッコいいな! この学園ってやっぱり顔……いや、なんでもない。お前もカッコいいぞ!!」
「フォローすんな?」
「ちなみに呼び方レンリで大丈夫だよ」
バシバシと二人で叩き合いつつ、きざむは「案内だけじゃアレだし一緒に食う? それとももう一緒に食う奴決まってる感じ?」とレンに振り返った。
「じゃあ二人がお邪魔じゃないならおれもご一緒しようかな?」
「ユウキは? 良い?」
「俺は良いよー」
「確かケイタも俺の面倒見ろって頼まれてたよな! 誘ってみるか。ケイター、お前も昼飯一緒に食うー?」
「食う」
少し離れた場所にいるケイへ、きざむは声を大きくして呼びかけた。
ケイは少しダルそうにして振り向いたが、きざむの隣にいた俺とレンを見て秒で頷く。俺たちのこと大好きなケイ、めっかわかよ……。
そんなわけで四人で食堂へと向かっていると、まぁすごいわ人の視線が。食堂に向かう道のりだけでどれだけ見られたことか。
おそらく転校生という物珍しさもあると思うが、それ以上にランキング九位と十位の二人が注目を集めているのだろう。
この視線を毎日感じながら学校来てんのか、この二人。俺だったら学校嫌になるわ。中学生のときは生徒会長だったけど、だからってこんな見られることも無かったし。プライベートとか大丈夫?
俺は気づいたら心配そうな表情を浮かべていたらしい。きざむが気遣わしげにこちらを見ていたことに気づかなかった。
「おいユウキ、平気か? なんかすごい顔してたけど」
「えっマジ? 大丈夫」
「まぁでもこんな見られてたら歩きにくいよな、転校生ってこんな注目集めるもん? 転校生が珍しいってだけか?」
「あー……おれたちのせいかも」
レンが申し訳なさそうに眉を下げて謝った。謝っていてもどことなく爽やかな風を感じるのはどういうことだろうか。
「どういうこと?」
「それはご飯でも食べながらおいおい説明するよ、長くなりそうだしね。若松くんもお昼のときに説明するつもりだったでしょ?」
「まぁ正直、あのボリューミーな話を十分休みでできるわけがないんだよな」
「話してるところわりぃけど、もう食堂着いたぞ。耳塞いどけ」
「は? 耳?」
「そうか、今日は竹村くんと梅木くんいるから耳塞がないとなのか」
俺はカーディガンのポケットから耳栓を取り出してきざむに渡した。人の使った耳栓は嫌かもしれないが、授業間の休み時間でおすすめの曲を教え合うときにイヤホンのシェアもしたし、大丈夫だろう。
俺はカーディガンの裾を伸ばし、少しでも手のひらの厚みを増やしながら耳を塞いだ。
レンとケイの二人も耳栓を既に装着していて、もう準備万端といったところである。
「開けるぞ」
ケイが言い、やたら大きくてやたら豪華な食堂への扉をグッと押した。
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