夜は長し愛せよ兄弟

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  「ふた、っ、りとも、……何して……ん、」 「キスマ?」 「それ付け方あって、んっ」 「分からん」    首筋を生ぬるい舌で舐められ、そこをかぷりと甘噛みされる。  いやキスマ付けようとして何で噛まれてるの。これ遊んでない? 遊ばれてない? キスマって吸うやつだからな???    前方には俺の首筋にキスを落とすレン。もはやキスマは諦めたらしい。  後方には飽きずにチャレンジし続けながらもかぷりと甘噛みをしてくるケイ。  どこを見ても可愛い。可愛いの渋滞。誰か交通整備して欲しい。追突事故起きちゃう。まぁ俺の感情は色んなところにぶつかり合いすぎて融合し始めてるけどね。俺は何言ってるんだ?     「ケイ」    名前を呼ぶと、ケイは少し顔を上げてくれたので、軽く後ろを向いてケイの鎖骨あたりに唇を当てる。誰かに見られたりしてからかわれたら可哀想だからね。  えーと、確か中学のときに雪磨とちょっとだけ見たAVでは、なんて見よう見まねのあっさい知識で試してみる。   「っ、ユ、うッ……、」 「あ、コレ行けたくね? 見てレン」 「ホントだ、どうやったの?」    ケイのちょうど鎖骨あたりには、赤い鬱血痕。  まぁこのあたりならインナーで隠れるし、誰かに見られることもない。  レンは目を輝かせて、それを見たりなぞったりしている。  ケイが小さく喘いだことで、レンは謝りながら手を引っ込めた。   「ね、おれもやってみたい」 「言うと思った、良いよ」    許可を出した瞬間、レンは俺の首筋に唇を当てた。せっかく第二ボタンまで開けたのに結構上の方だね。  ワイシャツだけだと第一ボタン閉めてもギリギリ見えそうだけど、タートルネックのインナーでも着れば多分見えないだろう。  次の体育はいつだったか。確か火曜日だったはずだ。キスマがどのくらいで消えるのかは知らんけど、今日は金曜日だし多分そのぐらいには消えてるでしょ。仮に残っちゃったとしても、火曜日あたりにはもう結構薄くなってるだろうし……。うん、大丈夫だな!   「まずそこで口を縦に開いて……ん、そう。上手」 「ん、……」    レンの頭を撫でてあげれば、嬉しそうに目を蕩けさせた。    後ろからのケイの視線もうるさいので、もう片方の手でケイの手を探し、指を絡ませるように繋ぐ。恋人繋ぎだ。  ケイの顔は見えないけど、ときどきぎゅっと握ったりしていることを考えてみれば、不機嫌ということもないはずだ。  ケイはもう片方の手を俺の頭に乗せ、さらりと髪を撫でた。そのままこてりとレンのことを覗き込むように俺の肩に頭を乗せる。可愛いのでレンのことを撫でていた手を外してケイのことを撫でた。  そこで少し眠たげな目で気持ちよさそうにするの、本当に可愛い。なんだ、この子も猫ちゃんだったのか……。この空間可愛すぎるな。全く困ったもんだぜ……! すみません嘘です全然困ってないですいくらあっても困らないです。むしろもっとあっても良い。     「い゛っ……」    ケイの方へ構いすぎてしまったせいか、レンから首筋に歯を立てられた上に睨まれる。  上目遣いで睨まれた。痛いけど可愛い。可愛いので撫でよう。    するりと背中を撫でてあげれば、レンはびくりと肩を震わせる。特別耳が弱いというだけであって、それ以外の部位も好きなところは好きなのだろう。  レンは驚きで唇を離してしまったようだ。  ケイには俺の首筋がどうなっているか見えているようで、そこを擦られる。   「どんな感じー?」 「うっっすら赤くなってる。ぶっちゃけ歯型でよく分からんけど」 「じゃあ成功じゃね?」 「いやこんなん誰にも分かんないでしょ……。歯型のインパクト強いな」    頑張ってたようだが、どうやらあまり付いてないらしい。初めてだししゃーない。むしろ俺ができたことの方が不思議。何となく手順を分かってたからだろうか。  どっちにしろインナーはタートルネックだな。もう五月も終わりというこの時期だから暑いけど。    そんな油断していたことを考えていれば、ケイがゴソゴソとワイシャツの下から俺の腹に手を差し込んできた。   「ちょっ、ケイ、あはっ、ははは!! 待って、くすぐったいからっ!!! あははは!」    そのまま脇腹あたりをくすぐられ、くすぐりに弱いわけでもなく、かと言って強いわけでもない俺は笑ってしまった。   「せっかくユウが中学生してんのに、オレたち全然年上っぽいところ見せれてない気がするから。なんかこう、年上の余裕? 的な」 「いや俺が学ラン着たところでお前らが年上になった訳じゃない……あはっ、待ておい、はははっ!!!」 「待ってケイ今ちょっとそれはヤバいかもしれな、あっ」    というか散々なんかお前らに優位に立たれてたような気はするけど、あれは年上らしさにはノーカンなわけ?  身を捩りたくても、いつの間にか離されていたさっきまで俺と繋いでいた手で抑えられてるし、太ももの上にはレンが乗っているしで、思うように動けない。   「待って兄さん! 暴れな、うぁっ、ほんと、んッ!」 「そんなこと言われても、あははっ! 無理だって、あはっ!! はははは!!!」 「当たって、あっ! る、から!!」 「っと、悪い」    レンは俺の足の上に跨るように座っていたので、俺につられるように揺らされる。レンは既に俺の胸元にて撃沈していた。  ケイが止めてくれたようたが、レンはぐるぐると目を回している。   「「あ」」 「~ッ!」    俺たちの揃った声に気づいたのか、レンは恥ずかしがって服の裾を伸ばして股間部分を覆い隠した。  そしてそのまま立ち上がり、一直線に部屋のドアへと向かう。   「……といれ、行ってくる」 「行ってら~」 「じゃあ俺もちょうど良いし風呂行ってくるか」 「自由だなぁもう!」    顔を赤らめ、そう吐き捨てたレンはドアをバタンと閉めて廊下へ出た。俺たちがあまりにも普段通りだったものだから、恥ずかしさは半減したようだ。   「じゃ、ケイ。俺風呂入って、」    ぐいと服の裾を引っ張られ、ぬるりと侵入してきた舌を許してしまう。  そのまま流れで、しかしレンが戻ってくる前までだと時短を心がけつつキスをし、俺は風呂へ向かった。
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