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「お前のような役立たずは、この国から直ちに去るがよい!」
玉座から放たれた王の恫喝は、アンナの体を震わせた。
「我が民を苦しめた罰として盛大な処刑を行うべきだが、占いでは偽の聖女の命を天へ捧げるのではなく、真の聖女を据えることで恵みの雨がもたらされると出たのだ。占いに感謝することだな」
いつの間にか、王の隣には、妖艶な笑みを浮かべた女性が立っている。
その装いはアンナと全く同じ。つまり、聖女という役目を与えられていた。
「貴様は偽物。真の聖女は、このマリーサだったのだ!」
俯いたまま、ひたすらアンナは堪えた。
王の罵声はその後も続いたが、ひとしきり憎悪を吐き出して満足したのか「もういい。早く出て行け!」という命によりアンナは両腕を近衛兵に捕まれて、文字通り城外へと放り出された。
砂埃にまみれた城の外観はくすみ、やけにぎらつく陽の光がその色を奪っている。
「……」
茫然としていたアンナだったがはっと我に返ると、勢いよく首を左右に振った。
(いつかこんな日が来るとは思っていたけれど、実際に起きると、何もできないものね)
聖女アンナ。
青空を写しとったような瞳は、天候を操る聖女だという啓示の証明だ。
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