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夜になり、ミーティングの時間となった。
ミーティングルームに集まり、桜台高校についてのスカウティングレポートが説明される。翔栄学園が決勝に来るという予想だったはずだが、桜台についても映像が既に用意されていた。
「投手の伊藤がキープレイヤーだ。試合によって組み立て方を変えてきている。非常にクレバーな投手だ。ただ、彼さえ崩せば控え投手は数段落ちる」
今大会の試合別の映像をコーチからの説明のもとみんなで確認する。
壮希のフォームや変化球など、用意されていたレポートのもと更に細かく分析されていく。
ただでさえ疲労している壮希に勝ち目はどんどんなくなっていく。
大まかに三つの作戦が出来上がり、すべてに共通して言えることは、序盤は様子を見ていくことだった。
「最初から捕まえるのは難しいかもしれない。だが中盤勝負と考えて、焦らず、それでいて堂々と行こう」
生田の言葉にみんなが大きな返事をする。
「よし。では最後に明日のスタメンを発表する」
松平監督の言葉に空気がピリッとする。完全固定レギュラーは数名しかいない。ベンチ入りメンバーだって出場機会を常に伺っている。
打順別に名前が読み上げられていく。セカンドは谷に変更された。外れることになった鈴木は「谷、頼むぞ」と拍手をしていた。
その他は準決勝と変わらぬメンバー、
「最後に、九番・投手」
今日投げた新見が連投することはない。
となると残る三人の投手の誰かが投げることになる。経験を積ませるなら二年の原田、もしくは――、
「若月」
僕の名前が呼ばれた。
「生田の言うとおり、堂々とこっちは行く。エースナンバーを背負うオマエで光北は甲子園を狙うぞ」
「はい!」
僕が返事をすると皆が拍手で応えてくれた。
大きな拍手に包まれながら、最強のチームが固まったと僕は感じていた。そのときだった。
「え」
ふいに、窓に何か水滴が当たるような音が響いた。
一つだけではなく、それは連続で。そして、その音の間隔はだんだんと早くなっていく。
「雨だ」
誰かの声に僕に思わず僕は笑みを浮かべてしまいそうになり、下唇を噛み誤魔化した。
響き始めた雨の音に僕は胸の中に安堵を感じていた。
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