四章 後悔の先に

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四章 後悔の先に

 ステージ袖で彼女の手を握る。早くなる鼓動と共に体温の異常な上がり具合を感じる。 「ついにここまで来たんだね」 「当然でしょ。ここまでやってきたんだもん」  弱気だった彼女が自信に満ち溢れた目でステージから漏れ出た光を見る。 感動するばかりの私達がチャンスを掴む瞬間。観客ではなく演者としてステラのステージに立つ。 「結成から一年で初めて世界へのステージに立つんだよ」 「信じられなかったね」  新調された衣装にピンマイクをつけすくむ脚を落ち着かせる。握るポケットにはあの日願いを込めた紙が入れられている。 「ねぇ灯」   「ここまでついてきてくれてありがとう」  ……それを言うのは私の方だよ、珠莉」 「負けっぱなしの私に夢を与えてくれてありがとう」  泣きそうになる私を見ながら『メイクが落ちちゃうでしょ』と温かく揶揄う彼女の手を握る力が強くなる。 それと同時に開幕を告げるアナウンスが鳴り響く。 「結成から一年で世界を掴む!ふたりの夢を追い続ける少女たちのグループ名は……!」  私たちのグループ名。それは  『アンノウン』  未だ解明されない、未知の未来を目指す私たちにしか名乗ることのできない特別。その誇りに恥じぬようステージに向かう。  閉ざされた幕の先には数えきれぬほどのサイリウムの光があった。
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